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ブライスが突然アセナのことを話し出したのは,自分を家に呼び戻す話の呼び水なのか…そう思って,優志はブライスに視線を向けた。
目を伏せ気味にして優志を見つめるブライスからは,優志への愛情が溢れている。同時に毎夜別々のベッドに戻らなければならない寂しさも。愛されていることに優志の胸がふつふつと熱くなる。
―俺も同じ気持ちだけど,もう少し…
優志は手にしていた紙類を脇に置き,ゆっくりとした動作でブライスに抱きついて頬をブライスの肩に乗せた。ブライスは両手で優志の背を悩ましげにまさぐり,相手の頬に自分の頬を寄せる。そしてポツポツと呟く。
「…俺はずるいから言うぞ。優志が俺の所に来ないのは,…やっぱり俺が…不能だから…かなって思ってしまうことを」
「そんなっ,そんなことはないよっ,全然そういう事じゃないっ!」
優志が勢い良く顔を引き上げると,ブライスが不安げに目を瞬かせている。
「そうじゃないんだ…,俺が…もう少し大学と寮生活を楽しみたいっていうか,大学そのものに浸りたいって言うか…」
言いながら,まずいよな…これじゃ俺にとってブライスは大学の二の次だって言っているようなものだ,とすぐに気がついた。しかし言葉はもう引っ込められない。
少し悲しそうな表情で優志を見つめているブライスに,優志は続けた。
「研究に邁進しつつブライスと恋人でいるって…わがままかな」
ブライスの瞳が僅かに煌めいた。
「俺,ブライスのここ,好きだし…今も触りたくってしょうがない…」
言いながらブライスの薄いハーフパンツの上の柔らかな部分にそっと手を当てた。優しくさすり始めると,その感触を楽しんで優志の唇が我知らず開いていく。
「優…」
ベッドの端に腰掛けたふたりは,そのまま抱き合って口づけを始めた。
「おっと…そこまでだ,ブライス,今日はそれ以上はダメだ…」
「…何で?」
横たわる優志に覆い被さって下着に手をかけたブライスが,突然制止させられて戸惑っている。
「…俺から始めるのに,いつもこうなっちゃうんだよな…」
ブライスの身体の下から身を引き抜いた優志は,深く溜息をついた。
「今週は,もうふた晩も,こういう事になっただろ? あとで言われるんだよ,隣の隣の部屋の奴に…」
「何て?」
「…え?ん…と『昨日は激しかったな』とか…」
優志は真っ赤になり消え入りそうな声で答えた。
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