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―1年は…長すぎたか…。
ブライスは自室のベッドに仰向けになっていた。やっと会えた優志の自分に対する反応が,予想していたものとあまりに違っていて,どう考えたらいいのかわからなかった。
―『うちにいる間はゆっくり眠りな』…こう言ったとき,優志は明らかにほっとした表情を浮かべていた。この家にいる分には,ブライスからセックスを強要しないという保証を感じ取ったのだろうか?
―優志は,俺とはもう…したくない…ということか?病気でもしているのだろうか。 俺との関係を,解消したいのだろうか。…誰か他に好きなヤツができた?
到着したときからの優志のよそよそしい態度から,いろんな想いが生じていた。
―優志が俺のことを,もう愛していない…?そんなことがあるのだろうか…
キスをしたときの,優志の反応を思うとそれは絶対に打ち消したかった。
―早まって考えるのは止めよう。きっと何か事情があるに違いない。優志が説明してくれるのを待った方がいい…
目を閉じていると,愁いを帯びた表情の優志が浮かんでくる。その様子が心配でありながら同時に押さえがたい欲情を覚えた。
―抱きたい…抱き合いたい,優…
隣の部屋で優志が一人眠っているかと思うと,ブライスは自分自身を慰めることもできず枕を抱き締めて夜を過ごした。
翌日,優志はブライス母子とショッピングセンターに行き,当面の生活に必要な物を買いそろえた。
前日よりは元気そうに見える優志だったが,アセナとは朗らかに話すのに,ブライスと話すときには何かが違った。通話アプリなどではわからなかった,わずかな遠慮とでもいうか,距離感というか,そうしたものがあった。
夕食のあと3人はリビングでくつろいでいた。まだ西陽の名残が部屋に差し込んでいて,夏の訪れが感じられた。
アセナがトイレに立ったとき、ブライスと優志はソファにふたり座っていた。
「優,…俺の父親,夏に結婚するんだ」
「えっ…」
「ケイトっていう名前で,プリンストンの大学職員をしている。もう付き合いは長いんだ。俺も向こうにいたときに何回か一緒に食事をしたことがある」
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