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「何だ,無粋な奴だな…」
「あのさ,もし良かったら今週末にブライの家に行ってもいいかな…」
「ああ,そういうことだったら今日は優を解放してあげよう。週末に優を堪能する…」
ブライスは優志に両頬を手で挟んで口づけした。少しだけ困った様な表情が浮かんだ。
「ごめんな,優…。優とこうして仲が戻ってから,頭の中では正々堂々優のことを裸に剥いていろいろやってみているんだけど…だけど…治らなくて…」
そんな,剥かれるとか言われて優志はボッと顔から火が出る思いだ。
「俺は本当に気にしてない…。いざとなったら…例の治療薬を半分にして服用するとか手はあるさ。それより,…今の状態にきちんと向き合っていきたい…」
立ち上がっていたブライスが優志の額に口づけした。
「ありがとう…優」
ふたりで部屋を出ると,共同スペースのキッチンでコーヒーを淹れている男が振り向いた。
「あ…」
優志が反応して表情を硬くした。それを見ていたブライスは,優志の腰に手を廻して優しく引き寄せ,二人の身体を密着させた。
「やぁ」
「…やぁ…,えっ…ジョーンズ? 君,ブライス・ジョーンズか?」
「俺のこと知ってるのか?」
「工学部で君のことを知らない奴はいないさ…。プリンストンの学部を終えて院に移ってきて,修士課程修了時にかなりレベルの高い論文を発表したって聞いたよ」
「…それは光栄だ」
「アンダーソン,トマス・アンダーソンだ。工学部の修士課程2年目だ」
名乗って手を差し出してくる。ブライスも手をの伸べるようにして,優志の身体をさらに引き寄せる。
「ブライス・ハニ・ジョーンズだ。早々とドームに戻って来るんだから,君も熱心な学生なんだろうな」
「いやぁ,次世代電子通信の開発をちまちまやってるだけで…」
「ああ,だから?耳がいいのかな。俺と優志はパートナーで,ここで密かに愛を確かめ合うこともあるんだけど…君には聞こえてる?」
「ブライっ!」
優志がブライスを振り返って見咎めた。
「ああ,その,ユウシに言ったことね…うん,その,仲が良いんだな,ぁー,密かにって感じではなかったけど…」
「いやいや,今俺のロケットがちょっと具合悪くて,もっぱら格納庫の手入れをしているだけなんだけどさ。
君,俺たちのこと気になるんだったら電子通信用のヘッドギアを身に付けることをおすすめするよ」
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