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ブライスは急に優志の脇と腿に手を差し入れて横抱きにした。
「うわゎ…」
ブライスの首に腕を回して,優志は必死でブライスにしがみついた。浴衣の裾が乱れて,優志の片一方の脚が露わになって下着が見えた。ブライスは息を呑んで白い腿に目をやった。
そのまま優志をベッドにぼふっと下ろして横にする。ブライスは立ち上がって浴衣の乱れた優志を見つめた。
温泉宿で着た浴衣とは比べものにならないくらい良い生地を使い,丁寧に手縫いで仕立ててあるのがわかる。
その浴衣を纏った優志と言えば,多少陽に焼けてはいるが,乳白色の陶器を思わせるしっとりとなめらかで緻密な肌をしている。濃い色の生地の中から,清楚でありながら生身故に匂い立つように息づいている身体がブライスを誘っている。
「ブライ…?」
じっとしているブライスに優志は不安げに呼ぶ。
ブライスは頭を左右に振ってから微笑んだ。
「…奇跡だと…思ってさ。ふたりが出逢ったのも,心を通わせられたのも,それからひどい試練を乗り越えたのも,ここに優がこうして静かに横たわっているのも…俺の前で…」
「そうだよな,全然プログラミングされていないことばっかりなのに,ちゃんとここにふたりしているのは,すごいいことだよ」
ブライスは優志に覆い被さって,ゆっくりと口づけた。それから少し顔を離した。
「感謝の気持ちでいっぱいだ…誰に感謝したりいいのかわからないけれど。ああ,やっぱり優だよな。優,俺のそばにいてくれて…ありがとう。俺から逃げないでいてくれて…本当に感謝してる」
「ん,俺も言いたい。ブライ,俺を見つけてくれて,ゆっくり導いてくれてありがとう。いつでもこのことは言いたかったから,言えて良かった」
優志が微笑んで目が細められる。
「優は本当に優しい表情をするよな。優の名前の文字通りだ…あ」
ブライスはベッドから飛び下りて机に向かい,引き出しから何かを取り出した。それを手に戻ってきてベッドに腰掛けた。
「ちょっと起きて」
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