151人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「いっ…」
ブライスは,自分を締め付ける優志の手を引き離そうとした。が,そうすると益々優志の手に力が籠もる。
「飲んだっ,飲んだ!規定の5分の1だけ飲んだ。だけど効き目が現れた時間からして,今日勃ったのは,明らかに自力でだ!いや,優のお陰だ,浴衣を着た優が超絶色気があったから俺の海綿体が充血したんだ!…今もこんなに硬いのは,もしかしたら薬の影響かもしれないが」
「…飲んだのか」
優志の三白眼があっさりと崩れた。
「ブライ,俺が言いたいのは,俺には嘘をつかないで,本当のことを言って欲しいってことだよ。どんなに小さな事でも,言いにくいことでも,事実を伝え合うのが一番だって学んだじゃないか,俺たち…」
優志がゆっくりと昂ぶりを扱く。目はブライスの視線を捕らえたままだ。
「ああ,そうだったな…。本当に悪かった,優,…俺のプライドが邪魔して…」
「…わかった。…ついでに訊いておきたいんだけど…」
「…ん?」
「ブライスが抱いたふたりってどんな男だったの?」
「………えっ!」
「いや,別にそいつらに嫉妬してるとかではなくて,ブライスが誰かを抱いたっていうことは知っているのに,どんな奴なのか知らないのが何かこう,落ち着かなくて…。見た目はどんなだった?」
また優志の手に力が籠もりそうな緊張感が漂っている。ブライスは細く溜息をついた。
「優,それを知っても…大丈夫か?」
「大丈夫だ」
優志が手をゆっくりと上下させる。ブライスは諦めたように天井を仰いで,力なく口を開いた。
「…一人目はヒスパニック系の…筋肉質な労働者風で…俺と同じくらいの年の男。…二人目は金髪碧眼で少しぽっちゃりした感じの…俺より若い社会人だった…」
「…ふーん,…名前とか覚えてる?」
「いや,知りたくなかったから訊かなかった。…俺は…恥ずかしいことだが性欲を満たすために出かけて,ただヤれればいいという感じの男を探したんだ。名前どころか,顔さえ覚えちゃいない…。すぐに忘れてしまえばいいと思って,わざと優とは似ていないタイプを探したような気がする…」
「…そんなセックスをしたんだ…」
「飢えていたとはいえ,あさましい性(さが)だよな,我ながら…」
最初のコメントを投稿しよう!