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「寮に通信機器を研究してるトマスっているだろ?トマス・アンダーソン。先週ユウシがカフェテリアで奴から自作の盗聴器についていろいろ聞いてるのに出くわしたんだ。俺,誰かに仕掛けるのかって聞いたら」
「…何て?」
「自分の部屋に仕掛けてブライスが聞けるようにしたら安心するかな,だって」
「……」
「トマスと俺はどん引きでさ…そんなこと恋人同士には必要ないって思いとどまらせて,あれ,ブライス…どうかした?」
「…いや,何でも…ない」
「…代わりに,盗聴器は別の所に仕掛けといたよ,2個ね」
「どこに?」
「ひっひっひ-」
「…奴のところか?」
「ビンゴ!」
「何のために…どうやって?」
「え,浮気防止のために決まってる。彼の教官室と教員アパートの寝室に誘われて行った時」
「………どういう…意味だ」
「言葉通りだが?」
聞けばマットとハーヴィッツは既にベッドを共にする仲になっていて,驚いたことにマットは計画を優志に打ち明けていた。だから優志は二人のことを知っている。さすがに優志本人とハーヴィッツのことは話してはいないようだったが。
トマスと優志が仲良くなっているとか,ブライスが知らない間に彼の周りで様々な人間関係が構築されていたらしい。
「ジョゼフはさ,予想通りのロマンチストで俺のこの演出にメロメロだ。ストレートになりきった俺を落とすために,そりゃいろいろ仕掛けてきたんだ。気付かないふりして徐々に相手の懐深く入っていく作戦,スリリングだったなぁ。ストレートなのに,ベッドじゃ天然の魔性テクを持つ俺にジョゼフはいちころ。今は,心にまだ迷いのある振りをする俺を引き留めようと必死だよ,ジョゼフは」
ブライスの顔は能面のようで感情がなかった。
「お前の話は終わったのか…」
「何だよ,ブライス,つれないなっ。俺の超絶テクをこれから」
ブライスは無表情なままマットを見た。
「ああ,もう分かったよ」
マットは倚子の背もたれに身体を寄せた。
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