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「…あの人,今までストレートの子を落として付き合っていたじゃない?それで……多分その子たちとは大したセックスはしてなかったようで…あの人へたなんだ,笑えるくらいに」
ブライスが溜息をつく。
「それで,俺が男同士のセックスのABCをさりげなく披露したらえらく感激して」
「さりげなくそんなことをしたら,お前がゲイだってばれないのか」
「ああ,ネットで調べたって…,男同士はみんなこうするのかと思って…って恥ずかしそうに言うと,信じるんだよ,あの人」
「確かに経験豊富という感じはしないな。ところで,その関係はいつまで続けるんだ?お前に夢中にさせておいて,頃合いを見て捨てるんじゃなかったのか?」
「…んー,あの人を野放しにするとまたストレートの子が被害に遭いかねないから…しばらくは俺のところに繋ぎ留めておこうかと思って…」
「…殊勝な心構えだ」
「あの人意外と優しいし,専門は言うまでもなく一流だし,一緒にいるのは正直楽しいよ」
「…マット,俺はお前みたいなのを何て言うか知っている。お前も大人なんだし身の振り方について俺は口を挟みたくない…」
ブライスがじっとマットを見つめた。
「…ん?」
「ただ一言,言っておきたい。マット,お前には幸せになって欲しい」
「ブライス…」
「本気で言ってるんだ」
「ああ…わかるよ。…俺,いい加減に見えると思うけど,いい加減な人間ではないつもりだから…」
「そんなことわかってる」
「ブライス,俺,ちょっと怖いんだ。今までその場限りの関係だけで本当の恋愛ってしたことないし,本物のカレシってできたことないから」
「ああ。お前はカムアウトが遅かったし,誰にでも初めてはあるからな。お前がお前らしくしていられる関係であることを願っているよ」
「ありがとう,ブライス。いい人だな,惚れてしまいそうだ…」
「なにかあったら大学のシアトル・マイナーズに連絡して。LGBT擁護団体だ。俺,水曜日のスイッチボードを担当することになったから,悩み事ならそこで聞く」
「ああ,ブライスがボランティアするやつね。社会貢献してるよなぁ。…願わくばそこに連絡しなくてもすむようにしたいけどね」
「はん…」
「話ができて良かった。またね,ブライス」
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