湖の約束 3

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湿った音を立てて,ふたりは唇を離した。優志が幸せそうな微笑みを浮かべて,もう一度ブライスの目をのぞき込む。 「愛している,ブライ…」 「…今日は俺の誕生日だったかな?」  ブライスがおどけて眉を上げ,優志の鼻に自分の鼻をくっつける。 「優,俺も優を愛している。俺の瞼が永遠に閉じられる日まで…」  ブライスは眉を少し寄せて,誠実にその言葉を口にした。 「ブライのこの瞳が見られなくなる日がいつか来るって,分かんないな…。俺たち歳が近いし,どっちが先でもおかしくない…。それまで,ブライの瞳をしっかり見ておくことにするよ…あと70年くらい?」 「70年…そのくらいかな。恒星の光が旅する時間に比べたら一瞬みたいなもんだけどな」  ブライスは再び口づけを求めて優志に近づいた。すると優志が間に手を差し込み,揃えた指の裏側でブライスの唇を押しとどめた。 「あの,いいものがあるんだ」  ポケットを探って,優志は小さなプラスチックパックを取り出した。中にころころとした粒状のものが入っている。 「食べる?」 「優,またロマンチックなことを…」  パックを開けて優志がブルーベリーを摘んだ。 「当然,食べさせてくれるんだろ?」  ブライスが笑いながら口を開け,下唇に舌を乗せる。間近で見るその口元がとても色っぽかったのか,優志の頬に一瞬で朱がさした。 「実りある人生…」  ブライスがそう言って少し顎をしゃくってブルーベリーを促す。優志はやっとのことでブルーベリーをブライスの舌に乗せた。 舌がゆっくりと口中に入り閉じた唇が上下する。口の中でブルーベリーが潰れていく様子が優志にも見えるようだ。 その間ブライスがずっと優志の視線を捕らえて離さないから,優志も目を逸らすことができなかった。 「知性…」  再びブライスが促す。そして「信頼」「思いやり」と続けてブライスが4粒食べ終えた頃には,優志は息を荒くしてぐったりしていた。 「では,お礼に俺が新しい方法で…」  優志の手からパックを取り上げて,ブライスは一粒自分の唇に挟んだ。眉毛を一瞬つり上げて合図すると,そのまま優志の唇にブルーベリーを運ぶ。その果実を舌で中まで押して優志の舌の上に乗せると,あとは激しく唇を合わせた。
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