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湿った音を立てて,ふたりは唇を離した。優志が幸せそうな微笑みを浮かべて,もう一度ブライスの目をのぞき込む。
「愛している,ブライ…」
「…今日は俺の誕生日だったかな?」
ブライスがおどけて眉を上げ,優志の鼻に自分の鼻をくっつける。
「優,俺も優を愛している。俺の瞼が永遠に閉じられる日まで…」
ブライスは眉を少し寄せて,誠実にその言葉を口にした。
「ブライのこの瞳が見られなくなる日がいつか来るって,分かんないな…。俺たち歳が近いし,どっちが先でもおかしくない…。それまで,ブライの瞳をしっかり見ておくことにするよ…あと70年くらい?」
「70年…そのくらいかな。恒星の光が旅する時間に比べたら一瞬みたいなもんだけどな」
ブライスは再び口づけを求めて優志に近づいた。すると優志が間に手を差し込み,揃えた指の裏側でブライスの唇を押しとどめた。
「あの,いいものがあるんだ」
ポケットを探って,優志は小さなプラスチックパックを取り出した。中にころころとした粒状のものが入っている。
「食べる?」
「優,またロマンチックなことを…」
パックを開けて優志がブルーベリーを摘んだ。
「当然,食べさせてくれるんだろ?」
ブライスが笑いながら口を開け,下唇に舌を乗せる。間近で見るその口元がとても色っぽかったのか,優志の頬に一瞬で朱がさした。
「実りある人生…」
ブライスがそう言って少し顎をしゃくってブルーベリーを促す。優志はやっとのことでブルーベリーをブライスの舌に乗せた。
舌がゆっくりと口中に入り閉じた唇が上下する。口の中でブルーベリーが潰れていく様子が優志にも見えるようだ。
その間ブライスがずっと優志の視線を捕らえて離さないから,優志も目を逸らすことができなかった。
「知性…」
再びブライスが促す。そして「信頼」「思いやり」と続けてブライスが4粒食べ終えた頃には,優志は息を荒くしてぐったりしていた。
「では,お礼に俺が新しい方法で…」
優志の手からパックを取り上げて,ブライスは一粒自分の唇に挟んだ。眉毛を一瞬つり上げて合図すると,そのまま優志の唇にブルーベリーを運ぶ。その果実を舌で中まで押して優志の舌の上に乗せると,あとは激しく唇を合わせた。
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