151人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
翌日の午前はふたりでダウンタウンに行き,衣類や文具を揃えた。昼食はハーレー家に呼ばれていた。優志がシアトルに来てすぐに寄ってからもう3ヶ月になる。
「いよいよユウシもこちらで大学院生活が始まるのか…。感慨深いね。3年前の二十歳のユウシの姿が思い出されるよ」
ドクター・ハーレーがあごひげを撫でながら目を細める。本当に…、とブライスも同意する。あの夏の優志は特別だった。
食後のアイス・ティーを飲みながら,皆で庭に下りていた。優志はゴールデン・レトリバーのボウとフリスビーをしている。娘達のセアラとエリンも時折加わっている。セアラは15歳になり,ぐっと大人びて170㎝の母親と同じくらいの背丈だ。
「ユウシは魅力的だし,素直だけど意志が強くて賢いから…セアラとどうかしら,なんてちょっと期待したんだけど…。ブライス,その,あなたたち,付き合っているの?」
「はい,付き合っています」
ブライスの言葉には何の迷いも無かった。
「優志が3年間にシアトルに来たときに,その,そうなりました。で,こっちで学生を続けようと話し合って…」
「セアラは知っていたみたいね,あなたたちのこと」
「そうです。セアラには精神的にも助けて貰いましたよ。心強い味方です」
「そうやってオープンにするってことは、この後のことも考えているのかい?」
「そうですね,ふたりで一緒にここで研究職に就きたいと考えています」
「君がシアトルに戻ってくれたのも嬉しいし,優志もとなると,同じ大学にいる者としては喜ばしい限りだ」
「ワシントン大は宇宙工学としては最先端という場所ではないんですが,俺たちは敢えてここで好きなことを研究したいと考えています。ここみたいな大学の方が可能性が広いんですよ」
「ああ,君たちには期待している。シアトルは様々な人種と文化と生活スタイルを受け入れる場所だからね」
「そうですね。ここで思い通りの生き方をしたいし,それをまた次の世代にも伝えていきたいですね」
「…君は大人だね。自分が25歳の時はまだ視野が狭かったよ」
「もしそうだとしたら…俺の生活環境のせいです。親とか自分の性的指向とか」
優志が大人たちのテーブルに戻ってきた。
「はーっ,今日一日分の運動したよ。ボウはすごいね,タフだ」
最初のコメントを投稿しよう!