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人生で一番の大後悔だった。
なぜ、あの時、すぐに彼への返事を返さなかったのか。
俺も、粉浜のことがずっと気になっていて、胸が張り裂けそうに好きになってしまったのに。
「先生、ごめん。俺もずっと止まっていたみたい。」
「そうか……。そろそろ、動き出せる時期が来たんだろうな、俺達みんな。」
そう答えを出した木田先生へ、群青の器に盛った枝豆を差し出した。
この青のように、もう一度、青く高く飛びたい。
「もう遅い」なんて、自分で決めつけたくない。
誰にも自分の道を塞がれたくない。
歯を酷く食いしばんで、爪が食い込むほど拳を強く握りこんで、先生に伝わりそうなほどに肩を震わした。
その日の夜空は、とても蒼かった。
佐崎拓も、マンションのベランダから蒼いその星空を見上げていた。
「……理め。俺だって、少しは変わったんだからな。前よりは、自分の思いを言えるようになったんだから。だから……、今度は……、ちゃんと向き合うから……。」
好きだ。
ベランダに持って出た飲みかけの缶ビールを、喉を鳴らしながら飲み干す。
喉が焼ける。
頬も焼ける。
胸も心も、焼ける。
あの日も、焼けてしまった。
『拓が好きなんだ。』
20年前の理のあの眼差しと言葉に、悔しいけれど、今も心を燻られる。
「やべ、右腕が疼いてきたや。」
当時、理に力強く掴まれた右腕。
『それだけは、変わらないから。』
今になって再燃し出しても、かまわないだろうか。
「再燃」完。
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