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南東寄りの夜空にオリオン座の三つ星を見つけた。
「なあ、拓。今夜、流星群が見られるらしいぜ。双子座流星群だって。9時から見られるらしいけど、そろそろ見れるかな? 」
「理、双子座ってどれ? ……うぅ、さむい……。」
俺の通う予備校の帰り道に、理が通う市立中央図書館があったので、秋頃から一緒に帰るようになった。
理の吐く息の白さが印象に深く残る。「どれだったかな」と、かじかんだ指で携帯を操る仕草も、俺の記憶に刻まれていく。
高校二年の冬の、二人で帰る流れ星の夜。
「……ん? あれじゃね? あ、駄目だ、一瞬。」
「……今夜はたくさん降るよ。しっかりお願いしとかなきゃな。」
「理は何を願うの? 」
「……もう決めてる。」
20年前を思い出そうとしたら、二番目に、上を見上げた理の赤らんだ横顔が瞼に浮かんだ。
「受験? 」
「いや……、人に言ったら叶わなくなるじゃん? 」
そう言って街灯の下で、少年っぽくはにかむ顔もずっと覚えている。
「あっ、もしかして好きな人……、あっ、ごめん。聞かない! ……叶わなくなるから。」
「……なあ、拓。」
俺の隣で立ち止まる。
赤らんだ、理の潤む瞳が俺を捕らえる。緊張が移って見つめ返してしまう。
「……拓が好きなんだ。」
ぽそっと、そう呟いた。赤らんだ唇が微かに震えていた。
「えっ……、」
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