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男二人は、パキパキと小枝を踏み折りながら、子供達の隠れている岩陰に近づいてきた。
子供達は、一瞬、顔を見あわせると、何故か見つかってはいけないような気がして、息をひそめ、ヘッドフォンをとることもなく、そのままそこにうずくまり動けなくなってしまった。
パキパキ音が徐々に子供達のところへせまる。
その時だった。
「前兆だ!始まったぞ!」
先程の男達とは違う声がヘッドフォンから響いてきた。
「ブルブル、ブルブル」
「始まる。始まる」
「準備」
「急げ急げ」
重なる幾つもの興奮した悲鳴のような甲高い声と同時に強風が吹いた時にでるいっせいに大きな旗が激しくはためくような音が鼓膜に沁みる。
子供達は、突然始まった狂宴におびえているのか身動き一つしない。
と、そこへ。
先程の男の悲鳴のような声が聞こえてきた。
「おい、やめろ、この裏切り者!お前残るって言ったじゃないか」
「ああ、確かに言った。言ったし、俺も残る気だったさ」
「だったらなんで」
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