生ける伝説

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 あれは、そう。  究極のクレーマーとも言われる、我が社の中でも一、二を争う神経質な得意先からの一本の電話がキッカケだった。 「えぇっ! も、申し訳ございませんっ! す、すぐにそちらに伺わせて頂きます!」  事務の女の子から、「〇△商事の安岡社長からです」と聞いた瞬間から嫌な予感はしていたのだが、電話口に出た途端、烈火のごとく怒鳴られる。  その内容というものが、こちらが納品した商品に対してではなく、いつもお世話になっているお得意先様へのお礼の品としてお渡ししたお菓子の数が、従業員の分よりも一つだけ多かったというもの。  こちらの感謝の気持ちとしてお渡ししただけの品。  しかも、賞味期限が切れているだとか、従業員の人数に足りなかっただとか。  そういう失態であれば、こちらも素直に謝罪することが出来るのだが、一つだけ多かっただけで叱られるとは、俺だって夢にも思わない。
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