脳内バトル~書籍との闘い~

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 耳に心地よいメロディーが流れてくる。これはあの本からか。言葉ではなく、音楽で心を掴んでくるとは流石だ。  気づけば、俺は本屋大賞受賞作の本を手にとりレジカウンターに向かい支払いをしていた。負けた。またしても負けた。  しかも単行本だ。この出費は痛い。  本好きの性だ。これはどうにもならない。  書店の出口を抜けるとき背後で、『俺様を買わなかったことを後悔させてやる』だの『買わないのなら呪ってやるぞ』だの『次は口説き落としてあげるんだからね』だのいろんな声が投げかけられていた。  思わず笑みを浮かべていた。  どうやら俺の書籍たちとの闘いはまだまだ続くらしい。  毎日たくさんの新刊本が発売されるんだから、当然と言えば当然だ。それに俺はこの闘いを望んでいる。  家に帰れば積読本たちとの熾烈(しれつ)な闘いも待っている。  こんな楽しいことはない。  俺は新たな挑戦者を待っているからなと、背後からの本の声に心の中で叫んでいた。負けるとわかっていてもやめられない闘いがある。
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