第1章

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一人は40歳くらいで仕事はしてそうではなく結婚どころか童貞だと思う。極端に几帳面な青年です。食事の時しか見たことがないのですが、全部の皿の汁の一滴も残さず「吸いまくり」ます。肺活量はかなりありそうで、体系的にも水泳部っぽいです。お膳を返却用キャスターに乗せ、テーブルに戻ってきて、椅子を戻しますがここが見どころです。背もたれとテーブルは、普通は椅子を中に入れるとくっつくのですが、彼は約2センチ位隙間を開け、この間隔の微調整に長い時は数分かけます。彼にとっては特有の意味があるのでしょうが、それは誰にもわかりません。退院する前に聞いてみたいと思います。彼にとって適切な隙間になったらジェンガから手を離すようにそっと手を引き動くはずのない椅子を見つめます。彼はたまに隣の人の椅子も直していますが、その時には徹底的に食べこぼしなどを拾い食べちゃいます。几帳面と潔癖症は違うのだと思いました。また彼は、他の人へ自分が迷惑をかけてはいけないという思いが非常に強いのか、自分の食器から醤油が飛び出たかもしれない、さっきぶつかったかもしれないとなると、親を殺してしまったかのようにひたすらに謝ります。これも何か背景があるのでしょう。 12月24日 木曜日 ここではただの平日。平日は食堂ホールでカラオケや手芸工作などが行われているが、俺は苦手なので参加しないでいる。 そうすると、毎日が同じになる, EDSL エブリ デイ セイム ライフ ETSL エブリ タイム セイム ライフ 一日24時間という感覚も分からない。食事は決まった時間に3回しているのに。 このまま出られないかもしれない。このまま出たくないかもしれない。誰も来なくなり、誰とも連絡がつかなくなり、病院から放り出されて家に帰ったら家が無くなっているかも。これはこれで面白い展開になると思うが、かなり長くなりそうなので、今は想像しないでおこう。聞けないな。 初めて診察があった。ナースステーションの中に診察室があるのを初めて知った。
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