第1章

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まずは体調を聞かれたので、入院時の記憶はあまりないが、今はとても落ち着いていると告げ、どうなれば退院できて、そのためには何をすればよいのか、再発しないようにするためにはと聞いたら、今の状態が維持出来るようだったら外出外泊を行い、それでも大丈夫だと判断したら退院となる。2月半ばだろうねと。再発防止は原因が無くならない限りまた発作は起きる。ただしこの前と違うのは前回はガス欠状態だったので何も出来なかった。今度は燃料満タンなので何かしら解決への活動ができる。この差だと。入院中はとにかく暇だからと言われた。納得したような腑に落ちないような。 また一人、気になる人について触れよう。とにかくバカヤローと叫んでいる。年は70くらいか。人を見かけで判断するのは良くないが(坂田師匠に似ている)、見た感じ、バカヤローと定年まで言われ続けた人生のような気がする。それがある日プッツンとなりバカヤローが止まらないのか、これは聞けないな。この人はそのこと以外は普通で歩くのもスタスタ背筋はシャッキリなので身体は丈夫なのであろう。毎食後には歯磨きしているのを見ると、この世代の人が高度成長期を支えてきたのだと思うと切なくなる。この人は俺が隣、もしくは向かいだと一言も話さずに食事をする。恐らく俺のような人に怒鳴られてきたのだと思う。 12月25日 金曜日 そういえば住民同士の会話をほとんど見たことがない。 いつも食事の時に近くに座る親父が「もうすぐ相撲だね!俺は白鵬応援してんだ!帰ったら見る!」と毎日言っているが、初場所までまだ1ヶ月位ある。ここの住民は時間の概念が根底から違う。全く時間を意識していないというのか、ちょっと持っていてと言われて何年もそのままでも、27時間テレビのマラソンのゴールをじかで見ようと8時間かけて東京ドームに行ってしまっても気にしない。タイムイズマネーじゃなく時間に価値が無いのだ。さっきの相撲見たいおじさんはあと一ヶ月の間は何もないのである。
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