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姉の結婚に先だち
親族紹介のレストランで
その人を一目見たとき、
甘い胸の痛みと切なさと、
絶対に手に入らない現実との前に
うちひしがれた。――
姉の結婚相手の京一さんは、
私の10も年上の28歳。
容姿端麗なうえに物腰も穏やかで、
会うたびに優しい笑みをくれる。
いつもきちんとした
紳士的な身なりをしていて、
その声は低く優しい。
対して私は
短大に入学したての18歳。
Hの経験は何度かあるけれど、
特定の彼氏は今はいない。
テニスサークルのセンパイからは
何人か付き合ってと言われたけれど――
はい、と返事が出る前に
京一さんの横顔が浮かんでは邪魔をする。
……あの人は、どんなふうに
姉を抱くのだろうか。
想像するほど胸がざわめいて、
ひとり暮らしのアパートの休日は
妄想にふけって半日が過ぎる。
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