code1:退屈

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浩の家から学校までは5時間かかる。だいたい8時に学校が始まるとして、3時に家を出なければならなくなっている。 このサイクルが浩を苦しめているのかもしれない。 「早く着替えろ」「朝は混むんだ」 そう言って父は浩を急かす。これも習慣になりつつある。 ”親がうるさい”なんて思うのは反抗期の普通の習性であろうが、浩の場合は一味違っていた。浩の場合、家族までもが重い存在になっていた。 浩は思った。俺ほど恵まれない人間はいないだろう。そう思ったのは初めてではない。 -また平凡な学校に着いた。 5時間もかけて来る意義があるのか…?そう思いながら校門を通る。知らない間に恋人面をした2人組が自分を追い越した。 自分の周りにいる者全てが幸せ者に見える自分に嫌気がさす。嫌々半分で教師に会釈をする。 無言で顔を見て目を逸らした。こいつは何がしたいんだ?みたいに思う。 浩が視線を前に向けて不満そうに歩き出した瞬間、目の前の光景に目を疑った。 何とそこには、まだ肌寒い春の早朝に、パンツ一丁で狂喜乱舞する人間がいたのだ。
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