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「ママー! ただいまー!」
今年小学校に入学した一人息子の拓未が、元気よく帰ってきた。
「ママ―、お土産あるよぉ~!」
少し人見知りなところがある息子が、楽しく学校へ行っている。
楽しそうな顔を見るのは、嬉しいけれど、少し寂しいのも事実。
そうやって、子供ってどんどん離れて行っちゃうんだなぁ・・・って。
玄関で忙しそうに靴を脱ぐ拓未を、笑顔で迎え出た。
「おかえり。何持ってるの?」
「おみやげー!! 学校で見つけたのー!」
右手で持っているビニール袋に、左手を突っ込んで、うんしょ、うんしょ、って探っていた。
「なに? なに?」
顔を寄せる私の目の前に
「じゃーん!」
可愛らしい効果音とは正反対の、おぞましい色をしたカエルが拓未の手の中に握られていた。
いや、握られていたんじゃない。そんなに小さくない。拓未の指がカエルの胴体の白いぶよぶよした皮膚に食い込んでいた。
拓未の顔の大きさと同じくらいの、大きなカエルだった。
背中に茶色いイボのような突起が、張り巡らされていて・・・・
一瞬で、全身に鳥肌が駆け巡った。
「ひぃぃぃぃぃ」
声が口の端から漏れ出て、その場で腰が抜けた。
「どうしたの? ママ? ヒキガエルさんだよ~?」
「た、たたっくん? お、お願いだから、それ、どっかにやってきて・・・」
それだけ言うのが精一杯だった。
「えーダメだよ~。実験に使うんだからぁ~」
「じ、実験?」
「うん、実験だよぉ! 実験! 実験!」
拓未はそのカエルを握ったまま、家に上がり込み、子供部屋に入ってしまった
「たっくん、たっくん、カエルさん、お家に帰そうね? いい子だから、ママの言うことを聞いて?」
子供部屋の入り口から、中を覗き込んだ。
拓未は、あの大きなカエルを、去年パパに買ってもらった虫かごの中に入れた。
「うーん・・これじゃあ、狭そうだなぁ~。ママ、もっと大きいのなーい?」
「ない、ない、ない。むり、むり、むり。
たっくん? わかったでしょ? カエルさん、たっくんのお家じゃ飼えないのよ・・」
拓未は、虫かごの中のカエルを上から覗き込んでいた。
「たっくん!! ふたっ! ふたしてっ! カエル出ちゃうから! 早くっ!!」
「今、探してるのー!」
拓未が机の下で四つ這いになった。
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