12人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
いくつかの、接客業を通して。
私の接客の意識として、喫茶店は始まりの場でもあり、最終目的地でもある。
喫茶店で働きたいと思ったきっかけは、喫茶店は時間を楽しむ場だと思っていたからだ。食事をするためだけに入るレストランとはちがい、お茶をしながらくつろぐ場所。そういうイメージが、そもそものきっかけ。
どこでどうそのイメージが付いたのかも分からないし、今思えば喫茶店よりもファミレスの方がドリンクバーがある点で、長居する人が多い気もする。けれど、田舎で育って、喫茶店もファミレスもほとんど入ったことのなかった私は、それが基盤として頭にあった。
ゆったりと流れる時間の中で、人間観察をしたいと思っていた。これは、作家になりたいという夢があったから。結果として、私は接客業自体が好き過ぎてそちらに夢中になってしまうことと、正直、人間観察をじっくりするということが自分に不向きだったのであまりできていないのだが。
一先ず、そんな経緯で私の喫茶店での仕事生活がスタートした。高校2年生の夏だった。
一番力を入れていた部活で劣等感の塊になり、その競技自体が嫌いになる前に辞めようと決めた。そして、ならば空いた時間を何に費やすのか。だったら、将来のことを考えて、高校卒業後は喫茶店就職しか考えていなかったので、修行のためにも、現場を知るためにもと、アルバイトを始めたのだ。
たぶん、その店の店長に会えたことが、私の接客人生の最初の転機だったのだと思う。店長は、お客さんを本当に大切にしている人だったから。小さな気遣いや心配りは、彼女から教えてもらった。
些細なことだ。どれを彼女から教わったのか、どれが自分で経験から学んだことか、区別のつかないものが多すぎるのだけれど、ふたつだけ。
「いらっしゃいませ」や「ありがとうございます」はどんなに忙しくても、お客様の顔を見て言ってね、そう教えられた。
特別なことではない。当たり前のことだけれど、大切なこと。
それと、間違った日本語は話さないこと。この話はまた別で書くつもりでいるので多くは触れないでおく。
店長が教えてくれたこととして記憶にあるのは、大変失礼なのだけれど、これくらいだ。あとのことは、いつどこで学んだのか覚えていない。
最初のコメントを投稿しよう!