第1章

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「溢れる好奇心は大切に。けれど人を傷つけない、迷惑をかけない」 母親からそう教えられた僕は、中学生になってからは落ち着いて行動するようになっていた。 それでいて、気になることは満足するまで探求して、それまで以上に充実した日々を送っていた。 ・・・・・・だけど、1ヶ月経ってクラスに慣れ始めた頃に、突然それは始まった。 最初は上履きを隠されたり、机にゴミを入れられる程度だった。 色んな本を読んでいた僕は、これがイジメでよくある方法だとすぐに気づいた。 「なぜ、僕が?」 そう思う一方で、本の中でしか知らなかったことを実際に体験して、ある種の楽しさも感じていた。 もっとも、そんな楽しさを感じていられたのはイジメが始まって3日ぐらいだったけど・・・・・・。 イジメは日を追うごとに酷くなり、持ち物への落書きなんかは可愛いもので、廊下でいきなりズボンを下ろされたり、殴る蹴るの暴力を振るわれたり。 登校してきたら、机の上にゴミ箱を逆さに置かれていることもあった。 その頃になると、イジメをする人間以外のクラスメートも僕を汚物のように扱い始めた。 あっという間に楽しい学生生活が失われてしまった僕は、たまらず親に相談した。 しかし、母親は「我慢することが大事」と言うだけ、仕事ばかりで家のことを軽んじている父親に至っては「イジメられる方が悪い」とのこと。 それまで、親というのは無条件で子供の味方になってくれると思っていた僕は、この裏切りにとても傷ついたことを覚えています。 同時に、他者に期待することというのは、愚かな行為だと骨身に染みて理解しました。 両親に裏切られた後に担任教師に頼ろうとは思えず、苦しみに耐える毎日を過ごすしかありませんでしたが、1つだけ希望はありました。 それは進級です。 イジメをしてくる人間がいなくなるか、少なくとも数人減るだけで状況は変わる。 そう思っていた。 ・・・・・・けれども、そんな淡い希望は脆くも崩れ去った。
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