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桜が咲き誇る四月。
新学期を向かえた生徒たちが賑やかに私立立帝学園中等部の正門を潜っている。
「あの車は…」
しかしその和気藹々とした空気は一台のベンツの登場によって一瞬で変化を遂げた。
「ああ、間違いない。」
その場は生徒たちのざわめきにより騒然となった。
「夾夜坊ちゃま、到着致しました。」
そんな中で何事もなかったかのようにベンツから降りてきた運転手が後ろのドアを開けてこう言った。
「ん?ああ、そうか…」
中に乗っていた少年もそれが当たり前のようにそっと車から降りてきた。
「やっぱり。」
「夾夜様だわ…」
夾夜 と呼ばれた少年は立帝学園の制服、白いブレザーに身を包んでいた。
彼は見た者の目を引く、緑がかったライトブルー髪と酷く冷たいディープシーブルーの瞳を持っていた。
髪の色も目の色も人工物とは程遠く、彼が純潔な日本人でないことを表している。
「行ってらっしゃいませ、夾夜お坊ちゃま。終わりましたならばご連絡くださいまし。すぐにお迎えに上がります。」
「ああ、ヨロシク。行ってくる。」
丁寧な言葉使いでこう言って一礼した運転手に対し夾夜はフワリと笑うと車に背を向けて歩き始めた。
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