チャンス到来?

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ぎくしゃく。 今の状態を表すなら、これ以上ぴったりの言葉はないで。 久しぶり、って言ったきり、お互い硬直してもうた。 「…………っあ、タカ、いっつもこんなに早いん?」 とっさに絞り出した一言は、頭真っ白やった割になかなかまともやった。 ……後で思うと、な。 こん時は、本当に真っ白やったから、そんなんまで頭回らんかったからな……。 「おん…。つか、今日は遅刻や。もう電車間に合わん」 「あ、そ、そうなんや」 あ、あかん。 めーっちゃドキドキしとる。 久しぶりのタカの声にこんなにときめくなんて、自分どんだけやねんな。 「陽菜は?なんでこんなに早いん。おまえ、大東やろ」 「え?あ、おん…。や、今日は特別やねん」 まさかタカに似た人を確かめるために、同じ電車乗ろうとしてましたー、なんて言えるわけないやろ。 ……むしろ本人やったし。 「ならええんか?大東ならたぶん俺と同じ電車乗ろうとしてたんやろ?もう間に合わへんで」 「や、別に絶対いかなあかん訳やないから…ええんよ、うん」 自分に言い聞かせるように言うと、変なやつやなって笑われた。 変わってないタカの笑顔。 楽しそうに、顔中で笑う顔。 でも、どこか爽やかやの。 タカ、元々カッコええから。 ……なんやねん! ほんまのことやもん! ……自分で言っといて、めっちゃ恥ずかしいけどな……。 ……でも、胸きゅんや。 「でもそろそろいかな、次のにも間に合わんで」 「ほ、ほんま?なら歩こか」 言われて、やっと家の前に突っ立ってたこと思い出した。 ちょっと気まずい雰囲気のまま、並んで歩き出す。 ううう、めっちゃ緊張するー!! うちにも、こんな乙女な部分残ってたんやな。 いっつもは、お姉ちゃんみたいとか、下手すると薫のオカンとか、そんなん言われてばっかりやもん。 「……陽菜は、今テニスやっとらんの?」 「っえ!何!?」 タカがいきなり話しかけてくるから、びっくりして思わず大声出してしもた。 「っアホ!まだ朝早いんやで!」 慌てたタカに押さえめの声で怒られてしもた…。 「ごめん…」 「声がでかいのも相変わらずやんなぁ」 素直に謝ると、タカは苦笑みたいな、懐かしいみたいな、そんな微妙な笑顔を浮かべた。
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