チャンス到来?

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うちの部活終わるのが6時やろ? そこから急いで電車飛び乗ったら、6時20分のには乗れるやんな? あー、でも日誌とかも書かなあかんのや…。 部活の最中に書ける時はええんやけどなー。 最近みんな気合い入ってるから、休憩あんまとらへんもんな…。 あかんかなー。 引退するまで我慢せなだめ? 「……な……陽菜って!!」 「っえ、なに!?」 すっかり自分の世界やったうちを引き戻して、タカはため息をついた。 「おまえ、その人の話聞かん癖直っとらんな……」 「う…。ごめん…」 自覚はあるからとりあえず謝る。 「別にええけど…」 タカはそう言うと、少し視線をさまよわせた。 「どうしたん?」 「いや…。おまえは何時の電車に乗っとるのかなと」 「へ…?」 意外すぎてびっくりや。 同じこと考えとったん? 「や、部活によるけど…。大体6時代の電車に乗っとるで」 「薫は?」 「薫は、なるべく一緒に帰っとるけど、最近は部活の子とも仲良うなったからな。遅くなる時は先帰ってきとるで」 「そうなんか」 ちょっと意外やわ、とタカは笑った。 タカも、薫の激しい人見知りを側で見てきとるからな。 心配なんやな、やっぱり。 「おん。うちの学校は3年でもクラス替えあったんやけど、最近はクラスにも馴染んできてん。今までからすると最速かもしらんわ」 「少しは人間に対する耐性ついたかな」 「そうだったらええんやけど……」 そう言うと、陽菜は心配性やなって笑われた。 「薫だって、もう18や。そろそろ、一人で立てるようにならんとな」 「そう言うても心配やねん。また、あの時みたいになったら、て……」 思い出したら、胸が苦しくなった。 じんわり涙が浮かんできて、慌てて拭う。 あかん、もうあのことで泣かんって決めたんに。 「俺らが守るって決めたやろ」 「おん……」 そう、うちの胸で泣き疲れて眠った薫を見ながら、二人で誓った。 もうこんな目に合わせへん、うちらが薫を守るんやって。 でも、だからこそ。 うちはショックやってんで。 ずっと一緒だって信じとったのに。 なぁ、タカ。 なんで何も言わずに、うちらの前から消えてしもた? でも、この言葉は。 怖くて口には出せそうになかった。
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