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うちが二人の間でそんな気まずい思いをしてたら、いきなり後ろから声かけられた。
「あー、やっぱり青ちゃんと薫さんやん。奇遇やんなー」
「河野っち」
振り返ったら、制服のままの河野っち。
珍しく一人や。
部活帰り、かな。
「珍しいやんな、一人」
「顧問に残されてもうてさ。うちのみんな、俺を置いて帰ってしまったんよ」
薄情やろーって笑いながら言う河野っちに、自然に笑顔になった。
「頼りない部長さんやんな?」
「え!そんなこと言うん!?」
ヒドいなーって眉根下げて笑う河野っちは、なんかよく言えばいい人、悪く言うならヘタレなオーラがにじみでとって、初対面の悠の緊張が和らいだのを感じた。
この子、元は社交的な子やしね。
むしろクラスメートのはずの薫のが緊張しとる。
「後輩さん?」
なんとなく一緒に帰る雰囲気になって、河野っちが悠に笑いかけた。
「あ、はい!1年の木下悠です!」
「俺は二人と同じクラスの河野裕弥。よろしゅうなー」
にこにこ笑う河野っちに、悠も笑顔を返す。
なんか兄妹みたいで微笑ましい二人やなぁ。
「河野っち、こう見えて部長さんなんやで。サッカー部の」
「え!そうなんですか!?」
悠に尊敬のまなざしで見つめられて、河野っちがやめてえや、と照れた。
だけど、うちの学校規模ではスゴいことなんやで。
河野っちの代のサッカー部は、今までと比べてかなり強い。
今までは一回戦とかそんなとこ止まりだったんが、秋の新人戦で一気に地方大会進出。
その後も何かと勝っとって、うちの学校内ではサッカーがちょっとしたブームになっとるんや。
「でも、河野っちちゃんと部を纏めとるやん」
「そんな立派なもんやないって。そもそも押しつけられたんやし」
河野っちは本当に恥ずかしいらしくて、顔が真っ赤や。
微笑ましいなー。
河野っちって、本当、純情で可愛いんよね。
ニヤニヤ笑うと、河野っちがもうやめてぇな、と真っ赤になったまま苦笑した。
なのに。
「あ!!」
いきなり声を上げるから驚いた。
「え、何!?」
本当に唐突。
薫なんか、驚きすぎてうちの腕をがっしり掴んでる。
かおちゃん、ちょーっと痛いでー…。
「なしたん?」
「あんな、実はな、さっきな」
河野っちは、ちょっと自信なさげに言った。
「浅川くん?見掛けてん」
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