偶然って怖いもんですね

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本屋の自動ドアが開くのももどかしくて、身体を縦にして中に滑り込んだ。 全速力で走ったから息切れしとるけど、今はそれどころやない。 タカ、タカはどこなんやろ…! うちらが高校に入ってからできたこの本屋は、二階建てでかなり広い。 一つ一つのコーナー探してる間にも、タカと入れ違いになったら…と思うと、気が焦るばかりやった。 マンガ、雑誌……とりあえず、自分の知っとるタカが行きそうなコーナーを覗く。 でも、おらん。 二階に上ると、そこは専門書や受験参考書が並ぶ場所。 うちもテニスのを見にたまに来るけど、そこに近いバスケのコーナーにもおらんかった。 なんや、やっぱり河野っちの見間違いか、それともすれ違いやったんかな……。 呆然とそこに突っ立っとったら、後ろからいきなり腕を掴まれた。 振り返ると、息を切らした河野っちやった。 ……ごめん、今、ちょっとがっかりした。 「青ちゃん、びっくりしたやん…っ…」 息を切らした河野っちは、へらっと笑った。 「二人も心配しとるから。戻ろ?」 「おん…。ごめん……」 心配かけてしもたことを、ちょっぴり反省する。 でも、タカに会いたかったなぁ。 今度、いつ会えるかわからんもん。 ううん、いつ会ったらええのかわからんもん……。 しょんぼりしているうちに気付いたんか、河野っちが隣に立って、ぽんぽんと背中を叩いてくれた。 見上げると、優しい笑顔。 「大丈夫やって、青ちゃん!常に前向きに、やろ。落ち込んでるん、青ちゃんらしくないでー」 な、とにっこり笑った河野っち。 ありがとう……。 なんや、ちょっぴり惚れてしまいそうや。 カッコええな。 「おん、ごめん…。戻ろか」 うちも笑い返して河野っちを見上げた途端。 「……陽菜?」 聞きたかった、声がした。 「……タ…カ……」 タカが、通路の向こう側に立ってた。 手には参考書を持ってて、あぁ、タカも受験生なんやってことをぼんやりと思った。
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