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この階段、学校の作りの関係上、体育館に行く時ぐらいしか使われてへん。
しかも、ちょうどこの階で止まってしまう階段やから、その本来なら上る階段があるとこに、数段の階段と物置がある。
あんまり人が来なくて、しかも座れて、相談ごととかするには絶好の場所や。
「どないしてん、薫。なんかあった?」
心配になってそう聞くと、薫は首を振った。
そして、悩んだような顔をしつつも口を開く。
「あのな…。私、みてん」
「何を?」
なんか、ゆーれいとでも告白されそうな雰囲気やな…。
「あいつ…」
あ、違った。
てか、誰?
「あいつ。……タカ」
一気に頭が真っ白になった。
「え、ど、どこで!?」
「うちの駅。あいつ、北山学院の制服着てた」
「北山……って、京都の?」
「うん。あのお金持ち学校」
薫の話はこうや。
今まで、二年ちょっと行方知れずだった、うちらと仲のよかった男子、タカを、家の近くの駅で見た。
そして、あいつは京都の全寮制金持ち男子高の制服を着とったらしい。
……全寮制なんに、なんでこんなとこおるんやろ。
「そこツッコまんでもいいやん……」
呟いたうちに、薫から更にツッコミが入る。
だから、もう癖やねんて。
ツッコミは条件反射なんよ。
「そうじゃないって。だから、タカに話戻そ」
…タカかー…。
……ほんまにな、中学までは仲良かったんよ、うちら。
そりゃ確かに女子と男子やもん、あいつにももちろん男の友達おったし、四六時中一緒とかそんなんはなかったけど。
でも、なんでか帰りは一緒に帰ってた。
バスケ部のタカとテニス部のうちと、吹奏楽部の薫は、ちょうど帰る時間が重なっとったし。
誰か遅れたら、なんとなく待ち合わせて。
なんとなく一緒に帰ってた。
んで、たまにはなんとなく遊んで。
楽しかった、な。
……そんな仲を壊したのは、やっぱりうち、かな。
「どうするん、陽菜」
「ど、どうするて?」
「私、最近吹奏楽の朝練で毎日早い電車乗ってるけど、あいつも毎日同じ電車乗ってるよ」
「……ほんまに?」
「せっかくのチャンスやん!」
そう薫は言うけど…。
あかん、会いたいってずっと思ってたんに、いざとなるとめっちゃ怖い……。
いつも前向きなんが、うちのモットーなんに。
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