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5月5日。
この日、知事に会う日である。黒いクマの着ぐるみがお辞儀して私たちを迎えに来ていた。
「相変わらずこのクマ、黒いな」と担任は言う。
「腹黒いんじゃね」と来なくてもいいと言ったのに聞かなかったサッカー部の部長が言う。
その黒いクマが彼の耳元に顔を近づける。そして彼は青ざめていた。
「どうした?」
「会長、このクマに告白されました」
「なんでやねん♪」と私が突っ込む前にどうしても行きたいと言った軽音部の部長が突っ込む。
「で?何って告白されたの?」
「君の瞳に恋をしたと……」
「あんたは乙女か!!」と吹奏楽部の部長さんが突っ込む。
「会長、早く行きましょう。知事の所に……」と漫画部兼文芸部部長が言う。
そして私たちは知事のいる建物、いや、部屋に飲み込まれていくのだった。
「本当に来てくれてありがとう……おっと、また揺れたね」
知事の言う通り、地震で建物が揺れる。
「揺れ動くのは地震か、それとも私たちもしくは彼の意志か?」
「久宮さん、何言ってるんですか。小声で」
「それで?君たちはズミレ部だったかな?」
「あっ、紹介します。私は電話で話した」
「赤崎心美さん。会長およびに君たちの部長……そして思いやりのある涙を流した子でしょ?」
「涙何か流してますん……」
「噛んだな……」
私の言葉で部員たち、および知事が笑う。これこそズミレ部だと私は自信がついた。
「では、続けます。彼女は漫画部兼文系部部長の久宮冥さん。その横にいるのがサッカー部部長の有咲裕二くん。軽音部部長の姫路明音さん。吹奏楽部部長の乙女崎友美さん。そして担任の萩風先生です」
私がみんなをそれぞれ紹介すると共にそれぞれお辞儀する。
「では、君たちはここで何をしたいかな?その答えを会長さんに聞いてみようかな?」
「笑顔にすることです!!」
私は自信を持って言う。
「ほう。名前がズミレ部なのにねぇ」
「英語のsmileを私がスミレと読み、ある書道部部長である彼女が濁点を付けてこうなったのです」と
姫路さんが言う。
「なるほど。そういう感じだったか。さて、その愚かなことをしたのはどんな書道部部長かな?」
「有河歩、私ですよ」
その声と共に扉が開かれる。仁王立ちで立つ彼女とその他数名の部長たちが立っていた。
「何であんた達いるの?」
「会長さん、すみません。どうしても役に立ちたくて……」
彼女たちの服は汚れていた。
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