33人が本棚に入れています
本棚に追加
「拓実さんは本当にズルい男だった。常務の娘と結婚しても私との関係はずっと続いていた。いつかは私だけを愛してくれるって信じていたけど、彼は離婚する気なんてなかったのよ。だって常務派でいればある程度の地位を約束されたようなものだし。私を営業から教事1課に移動させた時に『本気で邪魔になったんだ』って思った。それでも関係を断ち切れなくて苦しかった。本当はね、常務のためにいろいろ動いていたのも止めたかったの。だけど結局あの怪文書にも協力してしまったし。蘭さんにも嫌な思いをさせてしまって、ごめんなさい。だからせめて蘭さんと佐伯主任の関係については知らないふりをしたの。これでいいかしら?」
「でも、良かったですね。これで高柳さんの望み通りじゃないですか。小久保課長についていくんですよね?」
上村課長は人事交流で広報に来た高柳さんのことを『鍛えがいがある』って気に入っていたのに。
次の人事異動で高柳さんを広報にスカウトしたいって意気込んでいたけど、叶わなくなって残念がっていた。
「ちょっとは迷ったのよ。広報での仕事が私に合ってるんじゃないかって初めて夢中になれそうだったし」
最初のコメントを投稿しよう!