第1章 悪夢

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入り口の戸を遠慮がちに叩く音がした。 美奈子はそっと入り口に近づいた。もう一度 戸を叩く音がした。 「オレだ、美奈子。」 耀達であった。 美奈子が手が入るほど戸を開くと作務衣に 雪駄姿の彼は入って来た。この家の周りには 民家がほとんどなく、地元の人は滅多に 通らない。集落から離れて人通りさえ まばらな道の奥にポツンと立つ古い家は、 恐らく何年も前から同じ用途に使われて 来たに違いない。夜の闇の中を女と逢いに 修行僧が訪れる為に。
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