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「・・・とりあえず、お腹すきませんか?」
「ああ、そういや、昼飯食べるの忘れてた。」
「じゃあ、駅からでましょうか。佐近さん、何が食べたいですか?」
隣を歩きながら見上げると、急に立ち止まった佐近さん。
「ねぇ、綾くん」
優しく見下ろす佐近さん。
「俺の下の名前、覚えてる?」
「あ・・・えと。」
「将士(マサシ)」
俺に言い聞かせるように話す唇から目が離せない。
「将士・・・さん」
「これからは、下の名前て呼べよ。」
将士さんの瞳を見つめただけなのに、胸がきゅうんと痛くなった。
ああ。
俺は。
貴方に会うために生まれてきたんだ。
素直に、この人と一緒にいたいと思った。
「はい。将士さん。」
俺たちは、オレンジに輝きだした空の下を、歩き出した。
-Fin-
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