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悔しそうな顔した殿が、呼んだのは。
「左近、これを連れて落ち延びよ。」
まさか。
振り向いてそこにいたのは。
ずっと心の中で、慕い続けていたあの人。
「・・・殿っ!」
「さらばじゃ。」
そう言って、清々しい笑顔と共に、側に仕える男たちと、城の奥のほうへ入っていく。
「殿ぉぉぉっ!」
追いかけようとする私を、何も言わずに抱きしめる左近。
「ううううううっ。」
崩れ落ちる私の肩を優しく抱えて微かな声で、私を城から離れさせようとするけれど、なかなか身体を起こすことができずにいた。
突如、荒々しい破壊の音とともに、恐ろし気な怒号が近くに聴こえてきた。
「どこじゃぁぁぁっ!」
いつの間にか、敵方の兵どもが城内に上がり込んできていた。
声が段々と近づいてくる。
「さ、左近!私を、ここで殺して。」
必死に左近の腕にすがりつく。
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