5人が本棚に入れています
本棚に追加
夜回りおじさん
中学の時のことだ。
親や世間に反抗したい気分がやたらと高くなっていて、友達とつるんでバカ騒ぎをしたり、遅い時間まで家にも帰らずうろついているのがカッコいいと、そんな気分に酔っていた。
とはいえ、いかにも不良の先輩達と関わりたいとかの気持ちはなかった。
あくまで思春期の反抗心。それでも自分達なりに粋がって、深夜にコンビニ前でたむろしたり、公園で騒いだりを繰り返していた。
その人に声をかけられたのはそんな真似をしていた時だった。
悪友たちと公園に花火を持ち寄り、火の始末とかのことなんて考えもせずに騒いでいた。
そこへふらりと現れたのは見知らぬ中年男性だった。
「おい、坊主達。ここは火気厳禁の場所だぞ」
「誰だよおっさん」
「うっせーなぁ。関係ねーだろ! 向こう行けよ」
声を荒げて言い放っても男性は動じない。だから威嚇のつもりで火のついた花火を向けた。
いくら粋がっていても、所詮は小心な中学生達だ。本当に火傷を負わせる気なんて毛頭なく、ただ、うるさく注意してくる相手を追い払いたい一心の行為だった。
なのに男は、気の小ささからあえて長めに取っていた距離などお構いなく、ずかずかと俺達の側へ寄って来た。
火の粉が男にかかる。心の中では『どうしよう』と狼狽えているのに、虚勢が相手に花火を向け続けさせる。
かけられる熱い火の粉を男は何も言うことなく穏やかに見ていた。どころか、自ら花火の炎に手を差し出した。
「!」
男の手が燃え盛る花火の先端を握った瞬間、業火がその身を包んだ。
「いい加減にしとけよ」
最初のコメントを投稿しよう!