夜回りおじさん

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夜回りおじさん

 中学の時のことだ。  親や世間に反抗したい気分がやたらと高くなっていて、友達とつるんでバカ騒ぎをしたり、遅い時間まで家にも帰らずうろついているのがカッコいいと、そんな気分に酔っていた。  とはいえ、いかにも不良の先輩達と関わりたいとかの気持ちはなかった。  あくまで思春期の反抗心。それでも自分達なりに粋がって、深夜にコンビニ前でたむろしたり、公園で騒いだりを繰り返していた。  その人に声をかけられたのはそんな真似をしていた時だった。  悪友たちと公園に花火を持ち寄り、火の始末とかのことなんて考えもせずに騒いでいた。  そこへふらりと現れたのは見知らぬ中年男性だった。 「おい、坊主達。ここは火気厳禁の場所だぞ」 「誰だよおっさん」 「うっせーなぁ。関係ねーだろ! 向こう行けよ」  声を荒げて言い放っても男性は動じない。だから威嚇のつもりで火のついた花火を向けた。  いくら粋がっていても、所詮は小心な中学生達だ。本当に火傷を負わせる気なんて毛頭なく、ただ、うるさく注意してくる相手を追い払いたい一心の行為だった。  なのに男は、気の小ささからあえて長めに取っていた距離などお構いなく、ずかずかと俺達の側へ寄って来た。  火の粉が男にかかる。心の中では『どうしよう』と狼狽えているのに、虚勢が相手に花火を向け続けさせる。  かけられる熱い火の粉を男は何も言うことなく穏やかに見ていた。どころか、自ら花火の炎に手を差し出した。 「!」  男の手が燃え盛る花火の先端を握った瞬間、業火がその身を包んだ。 「いい加減にしとけよ」
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