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「うそ、どうして?」驚きのあまり、思わずタメ口になった。
受話器の向こう側から、生唾を飲み込む音が聞こえた。
「三日前です」
買い物帰りの不慮の事故。前方不注意のトラックに巻き込まれてしまい、タニザワが病院に駆けつける前には息を引き取っていたそうだ。
一澄は口を開き、「それは」といった。が、そこから先は何もいうことができなかった。どう返せばいいのか。ご愁傷様というべきなのかもしれないが、声に出してそれをいうと気持ちのこもっていない薄っぺらい慰めのように聞こえそうで、思わず口を噤んでしまった。
「こちらの配慮が足りず、驚かせてしまったみたいですね。申し訳ないです」
丁寧な口調でタニザワが詫びた。
「とんでもないです。こちらこそ失礼を」慌てて弁明しようとする一澄にたいし、タニザワは「仕方がないです」と、ぽつりとつぶやいた。
「正直に白状させてもらいますと、芳乃さんにお電話させて頂いたのも理由があります」
タニザワは一度咳払いし、「実は」といった。
「生前の妻から、芳乃さんに相談したいことがあったのを私に相談したことがあるのです」
「サトミ……あ、いや奥様があたしにですか?」
「はい。芳乃さんはなんでも心霊関係のお仕事をされているそうで」
「え、あ、まぁ」
間違いではない。
たしかに会社のホームページや新聞の広告欄に『心霊関係の悩み相談承ります』と紹介している。その認識は合っている。合っているがゆえに否定できないことが非常に歯がゆい。
「私はあまりそういった関係のものを信じない性格でして、当時はまともに取り合いませんでした。ですが、今回の一件がひょっとしたら妻の死因と何か関係があるのかもしれないと感じ、思い切ってお電話させて頂いた経緯です」
「あの、ちなみに警察の方はなんと?」
「調査中とおっしゃっていました。おそらく事故の可能性が高いと。すみません、続きは明日直接お会いしてお話させてもらえますでしょうか?」
「え、明日ですか?」
「はい。明日妻の通夜があります。その際に詳しいお話をさせてもらえると助かります」
タニザワは場所と時間だけを伝えると、一澄の返事を待たず、よろしくお願いしますといって電話を切った。
……強引だ。強引すぎる。
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