第1章

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 いつの間にか結婚していた同級生が、いつの間にか亡くなって、そして亡くなった同級生の旦那さんとどういうわけか明日会うことになった。  高校を卒業以来、サトミと会っていない。会っていないどころか今の今まで存在を忘れていた。ちょっと悪ぶった同級生がいたという印象があるだけで、サトミとはとくに接点があったわけではない。  タニザワからサトミが死んだと聞いた時、悲しいという感情は湧き上がらなかった。どちらかといえば、芸能人のゴシップ事件を知ったみたいな、ひどく他人事のように感じるだけで、ただ驚いたというのが正直なところだ。こんなにドライだったのかあたしは。と、むしろ自分の人情味のなさに呆れてしまっている。  一澄は窓に振り向いた。  ブラインドが開いた窓に、自分の情けない顔がうつっている。  まるで一〇代の子供みたいな顔。今にも泣き出しそうな、不安げな表情を浮かべていた。  優先すべきことは明確だ。やるべきことは決まっている。  社長と一澄だけの小さな調査会社は、毎月赤字続きでいつだって倒産の危機に瀕している。  心霊現象を専門にしているふれこみがあるせいでことあるごとに詐欺集団か何かと勘違いされるし、年収は同年代と比べて遥かに下で、まだコンビニでバイトをした方が安定した生活ができる悲惨そのもの。毎日へとへとになって仕事をしても給料は上がらない。恋人を作る余裕だってない。コンプライアンスもへったくれもないような、スーパーブラック企業で働き詰めの毎日。いいことなんてひとつもない。家に帰って晩酌をする度に「あたし何やってるんだろう」と振り返ってしまうぐらい心が病んでいることもしょっちゅうだ。  いつだってギリギリの崖っぷち。毎日を生き残るので精一杯だ。  こんな深夜にいきなり電話をかけてきて、半ば強引の押しかけ依頼を対応するだけの余裕なんてあるわけがない。  あるわけがないんだ。  一澄はノートパソコンのディスプレイを見つめた。  書きかけの報告書のウィンドウが開いている。  ノートパソコンの横に、今月の営業報告書が置かれているのに一澄は気づいた。  今月も赤字だ。  引き受ける前にキャンセルとなった依頼が五件。そのうち、紹介した業者がインチキだと訴えられてクレームを出してきた案件が一件。  このままいけば、給料の支払いは来月に持ち越されることは確定される。 「ああ、もお!」
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