ボクノカタチ

3/4
前へ
/4ページ
次へ
僕はショックを受けている。 死の宣告や親からの遺伝であること、一生完治しないという現実がショックだったのではない。 告知を受けた瞬間、僕は確実に嬉しかった。 嬉しいという感情が湧き出し、実感した事に気づいたのがショックだったのだ。 宣告のとき、少し笑みを浮かべていたのではないかとさえ思うほどだ。 僕は今の自分が嫌いで、生活にも満足してない。生きている事も両親に対する感謝の気持ちもない。何も無い。 僕は生きているフリをしているだけで、生きていない。息はしているが活きてない。 それが僕。だから、死ぬかもと言われた日の夜に独り言で、つぶやいた事も納得できた。 「あ~、ようやく楽になれる」 結果を言えば、治療を始め症状も治り経過観察となった。一応の解決だ。だが、それにはなんの意味もないし、興味もない。ただ分かったことは、このままではダメだという現実だけ。 その日も。また次の日も。子供の頃の記憶がよみがえってくる。 そして僕は、全てを変えることにした。 とりあえず、今の会社を病気の事を言い訳に辞め、東京に向かった。 なぜ東京か。そんなことは分からない。ただ何度か母親と行った記憶があることは覚えている。 貯金は堅実にしていたので、お金には困らなかった。仕送りも毎月している。これだけ聴けば、無計画な奴ではあるが、行動力はあり、親に仕送りもしている、そこそこしっかりした人間に見える。しかし、根本が欠落しているのである。生きる目的や活力。理由。あとは、自分自身?などである。 仕送りをしているのも、ただただ逃げているだけだ。 どんな形でもいいから、生きている実感が欲しかった。子供の頃は生きている実感が確かにあった。あの頃に戻りたい。でも、時間が巻き戻らない事ぐらい知っている。もうあの頃には戻れない。だから、僕はカタチを作る事にした。誰も真似できない自分だけのカタチを作り、みんなにココに僕がいる、いた事が分かるように。 そのために、色々な事を経験した。そして探した。 東京にきてからコンビニのアルバイトを始め、インターネットカフェ、カラオケ、居酒屋、雑貨店、深夜のコールセンター、日雇いのエンジニア。とにかく、色々だ。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加