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始まりはただ、ほんの小さな約束だった。
幼い紫の幼女が白銀の少年に、初めての恋をした事がきっかけの本当に小さな約束。
「 大きくなったら、お兄ちゃんのおよめさんになる」。
紫の幼女は無邪気な笑顔で少年に言った。
少年は微笑んで頷く。
「君がその時まで俺のことを覚えていたら、きっと、迎えに行くよ」
そう言いながら、少年は幼女にロケットペンダントを渡す。
少年はこの時は別に、幼女の言った言葉を本気にはしていなかったが、自分に懐いてくれている事だけは解っていたので、せめてもの思い出として、ロケットペンダントを幼女に譲ったのだ。
零れ落ちるかの様な大きな目を更に見開いている幼女の顔は、驚きに満ち溢れていた。
「これ! お兄ちゃんがいつも着けてたヤツ!」
「俺にはもう必要のない物だから、貰ってくれると助かる」
少年の言葉に目を丸くすると、軈て幼女はそれを大事そうに小さな両手で包み込み、「ありがとう」と笑う。
「ずっと、大事にする!
だから、絶対、迎えに来てね!」
それが、最後に交わした、幼女と少年の何処にでもあるような約束。
その約束は、紆余曲折の末に遠い未來で果たされる事になる。
長い長い旅の終着点にあるのは──。
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