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「え──」
状況が飲み込めず、璃王は静止する。
グッと近づいた男性との距離に、璃王は内心でテンパった。
──これは、この状況はなんだ!?
顔近い! 床からの距離が遠い! 何なんだ、この状況!?
何、この少女漫画的で、今日日の年頃の女が喜び勇んではにかみながら浮き足立ちそうな状況!?
璃王がフリーズしていると、男性は 言った。
「何だ、ドレスで重いのかと思ったら・・・・・・普通に余裕だな」
自分を見上げながら言ってくる男性は、少し微笑んでいる。
男性は璃王の言葉を、自分は重たいから放っていけ、と言っていると解釈したのだ。
抱き上げてみれば何てことない。 普通に軽い、と男性は言った。
「え? あ・・・・・・は・・・・・・離せっ!!」
男性の言葉で我に返った璃王は、男性を咎める様な強い口調で言った。
すると、男性の目付きが鋭いものへ変わる。
「死にたいのか、お前は?」
死にたいなら置いていってやる、と男性は付け足す。
その言葉に璃王は言葉を詰まらせた。
璃王は自分一人で逃げ切れる方法があるが、それを男性に言ったところで怪しまれるだけだ。
それはそれで面倒くさいと思ったので、言葉を詰まらせたのだ。
男性は歩き出しながら言う。
「そうじゃないなら、大人しくしてろ」
男性の言葉に璃王は何も言えなくなり、大人しくする事にした。
別に、男性から逃げる方法がない訳じゃない。 幾らでもある。
しかし、それ以上に璃王は男性に対して、何処か懐かしい様な感覚を覚えた。
何だ? 初対面の筈──なのに、どうしてこんなに懐かしい?
璃王は、そんな事を考える。
懐かしさを感じるクセに思い出せないなんて、おかしな事もあるもんだな、と璃王は思った。
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