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その頃、会場内では──。
「神南!」
「公爵!」
弥王は、避難する人垣の中にグレアを見付けると、走り寄る。
すると、弥王に気付いたグレアが弥王を呼び、弥王はそれに応えた。
グレアは、急ぎ足で外へ向かう弥王を追い掛けながら、先程から姿の見えない璃王の事を訊く。
「よくやった。 神谷は?」
「先祖とお茶会したくなかったら、話は後だ!
思ったより火が廻るのが早いから、ここもいつ燃えるか解らん!
彼奴なら、猫より早く危険を察してさっさと逃げてるだろう。
五感と第六感だけは良いからな」
走りながら、弥王はグレアに逃げる事を最優先にしろと促す。
──結局、オレ一人が嫌な役回りしたじゃないか。
これなら、深夜に忍び込んで殺れば良かった。
弥王は、逃げながらそんな事を思う。
まぁ、殺せたので結果オーライとしようか。
弥王の上機嫌な真っ黒い笑顔を見て、グレアは、彼が余程嫌な目に遭ったのが容易に想像が付いた。
弥王が上機嫌で真っ黒い笑顔を見せるのは、標的に嫌な思いをさせられて、それを自分で殺した時だ。
弥王がグランツにハニートラップを使っていた所を目撃したグレアは、その後でグランツが弥王に何をしようとしたのかが想像が付いた。
そりゃ、上機嫌な黒い笑顔を浮かべるわ。
男の弥王からすれば、同性に迫られる程気持ち悪いことはなかっただろう。
ふと、そこで改めて、隣を並走している弥王を見てみる。
はっきりした目鼻立ちに、吸い込まれる様な翡翠の左目。
一見すると、中性的な顔立ちの美少年だが、よく見ると色白でまるで女みたいな顔立ちをしている。
──それにしても、何故、あの時・・・・・・。
グレアは、先程の──ナタリアに弥王との関係を訊かれた時の事を思い出す。
“彼女は私の恋人だよ”
──何故、私はあんな事を言ったのだろうか。
実を言うと、グレアもよく解らずに、咄嗟に出た関係を言っていたのだった。
確かに神南は、昔会ったあの子に似てはいるが──。
そこまで考えて、グレアはまさかな、と首を振る。
神南は男で、あの子は女だ。
年は同じくらいだが、神南があの少女の筈はない。
だって、あの少女は──。
そこまで考えて、グレアはそれ以上の事を考えるのはやめた。
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