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「レイナス・・・・・・」
璃王は、先程の男性とのやり取りを思い出して、目を閉じる。
足首には、レイナスと名乗った男性が巻いてくれたハンカチがあって、それに大事そうに触れる。
──懐かしくて、不思議な人だ。
璃王は、彼にそんな印象を抱く。
──何だろうな? この感覚・・・・・・。
蒼い髪が風に浚われ、結われていた髪を解く。
言い表し難い感覚に璃王は戸惑いながら、夜空を見上げた。
漆黒の天穹には、下弦の月と星が散りばめられていて、とても綺麗だと思う。
「璃王!」
暫くそこでじっとしていれば、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた。
その声の方を見れば、いつの間にか変装を解いてた弥王が走り寄ってくるのが見える。
その後ろには、グレアの姿も見えた。
近付く二人を璃王は呼ぶ。
「弥王! ファブレット公爵!」
「無事だったか、神谷」
グレアの言葉に璃王は頷く。
何処も怪我をしている様には見えなかったので、グレアは安堵する。
「まぁ、精神的にも全体的な身体的にも無事みたいだが・・・・・・あぁ、間違えた。
足が大惨事になった様だな、璃王?」
弥王は何気にまだ、グランツの事を引き摺っているらしい。
弥王の言葉にグレアは苦笑する。
グレアが苦笑した理由は解らなかったが、璃王は取り敢えずそれはスルーして、頷いた。
「あぁ、まぁな。
靴擦れに少し足を捻っただけだ。 何ともない」
「立てるか?」
璃王の説明を聞いたグレアが、璃王に手を差し出して、肩を貸そうとする。
だがそれは、璃王が手を払ったことで拒否された。
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