13人が本棚に入れています
本棚に追加
パァン、と、乾いた音が夜空に響く。
いつもならば、気にせずにグレアの手を借りている所だが、今は何故かグレアに触られるのが嫌だと思ったのだ。
そんな璃王の心境の変化に気付かず、グレアはただ、払われた手を引く。
「神谷?」
「あ・・・・・・と・・・・・・大丈夫、だ、これくらい・・・・・・」
グレアに声を掛けられ、璃王は我に返る。
無理に立ち上がれば、捻った右足に上手く力が入らずに、璃王は頽れた。
「っー!」
「まったく、仕方がないな、璃王は・・・・・・」
見兼ねた弥王が、璃王をひょい、と抱き上げる。
璃王の心境の変化に弥王は気付いたのだ。
多分、さっき何かあったのだろう。
今の璃王はまるで──。
それ以上、弥王は考えるのをやめた。
根拠もない変な推測をするのは悪趣味だ。
ただでさえも璃王に「キング・オブ・悪趣味」と言われているのに、これ以上言われたら立ち直れない。
「さて、グランツ殺して屋敷も大炎上させて任務も終わったことだし、帰るとするか。
さっさと寝て、今日の事は忘れたいし」
弥王の言葉に、璃王は弥王が任務中にキレた事が何となく解った。
弥王が屋敷を燃やすのは、大抵は逆鱗に触れた標的を跡形もなく灰にしたい時だ。
それほどの事をグランツは弥王にしたのか・・・・・・と、璃王は思う。
「それにしては、中々良い仕事をしていたと思うのだが?」
弥王の愚痴を拾ったグレアが弥王を振り返り、言う。
どうやら、弥王がハニートラップを使っていた所をばっちり見たらしい。
弥王はグレアに詰め寄る。
「何処から見ていたっ!?」
「“美しいだなんて、そんな事はないですわ。想像していたよりも、貴方の方がずっと素敵でしてよ?”だったか?
あーあと、“素敵な貴方に一目惚れ”・・・・・・とか随分と大胆な事も言っていたな?
ハニートラップなんか、何処で覚えたんだ?」
「全部じゃないか!
今すぐ忘れてもらおうか、公爵っ!」
グレアが激白すると、弥王は顔を真っ赤にして声を荒げる。
グレアの話に璃王は衝撃を受けた。
──弥王がハニトラを使った、だと・・・・・・!?
男相手に・・・・・・!?
璃王にとってそれは、ある日突然、超生物が月を爆破した犯人だと告白し、自分の担任になったと告げられ、来年には地球も爆破すると言われたよりも衝撃的な事だった。
最初のコメントを投稿しよう!