第3楽章 標的─ターゲット─

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「──で、今回の標的(ターゲット)・・・・・・ウルド・グランツは切り裂きジャック2世(ジャック・ザ・リッパー セカンド)ではなかったが、婦女子失踪事件ではクロだったワケだ」 それから、弥王、グレア、璃王は裏警察(シークレット・ヤード)の本部に戻っていた。 弥王は、デスクに座って話を聞いているグレアに、先程の任務の報告をする。 「奴はオレに、公爵との関係を聞き出そうとしていた・・・・・・狙いは公爵と関係のあった女性の様だった。 きっと、今までの被害者も同じ様な手口で狙われていたのだろう。 これを聞いて、何か心当たりはないか、公爵?」 弥王の報告を聞いて、グレアは頭を抱えた。 「──ない、筈だ。 私は彼とは面識は──」 「それはねぇぞ、公爵」 グレアの言葉を遮って執務室に入ってくるなり、璃王がデスクに書類を投げる。 その璃王は、先程の可憐な姿から一転、いつものメランコリックな表情を浮かべた少年に戻っている。 璃王は続けた。 「ウルド・グランツ。享年22歳。 11月22日生まれのスコットランド出身。 私立の寄宿舎学校(パブリックスクール)に首席で入学し、それ以来の活躍は目覚ましく、天才と持て囃されていた。 だが、同じ年の後期になると、彼の存在はある一人の“天才”の登場によって、揺らぐ」 璃王の話に、璃王の言わんとしている事が解り、グレアはハッと璃王を見る。 目の前には藍色の眼光が、自分を射抜く様に見ていた。 「彼の才能も努力も、その天才には及ばず、荒れた彼は退学・・・・・・。 もう、解っただろう。 グランツは嫉妬していたんだよ。 何でもこなしてしまえる天才の名を欲しいままにしてきた公爵に。 それが憎しみに変わって、今回の事件が起こった。 恨みを買う理由はないが、妬みを買う理由はあったんだよ」 璃王の刺々しい物言いに見兼ねて、弥王は「璃王・・・・・・」と、璃王を制止する。 璃王の言葉にグレアはどんどん落ち込んでいる様で、彼はデスクに項垂れた。 事件の被害者の中には、学生時代にグレアと仲の良かった女性も何人か居たらしく、グレアがショックを受けている事は解った。
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