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「──で、今回の標的・・・・・・ウルド・グランツは切り裂きジャック2世ではなかったが、婦女子失踪事件ではクロだったワケだ」
それから、弥王、グレア、璃王は裏警察の本部に戻っていた。
弥王は、デスクに座って話を聞いているグレアに、先程の任務の報告をする。
「奴はオレに、公爵との関係を聞き出そうとしていた・・・・・・狙いは公爵と関係のあった女性の様だった。
きっと、今までの被害者も同じ様な手口で狙われていたのだろう。
これを聞いて、何か心当たりはないか、公爵?」
弥王の報告を聞いて、グレアは頭を抱えた。
「──ない、筈だ。
私は彼とは面識は──」
「それはねぇぞ、公爵」
グレアの言葉を遮って執務室に入ってくるなり、璃王がデスクに書類を投げる。
その璃王は、先程の可憐な姿から一転、いつものメランコリックな表情を浮かべた少年に戻っている。
璃王は続けた。
「ウルド・グランツ。享年22歳。
11月22日生まれのスコットランド出身。
私立の寄宿舎学校に首席で入学し、それ以来の活躍は目覚ましく、天才と持て囃されていた。
だが、同じ年の後期になると、彼の存在はある一人の“天才”の登場によって、揺らぐ」
璃王の話に、璃王の言わんとしている事が解り、グレアはハッと璃王を見る。
目の前には藍色の眼光が、自分を射抜く様に見ていた。
「彼の才能も努力も、その天才には及ばず、荒れた彼は退学・・・・・・。
もう、解っただろう。
グランツは嫉妬していたんだよ。
何でもこなしてしまえる天才の名を欲しいままにしてきた公爵に。
それが憎しみに変わって、今回の事件が起こった。
恨みを買う理由はないが、妬みを買う理由はあったんだよ」
璃王の刺々しい物言いに見兼ねて、弥王は「璃王・・・・・・」と、璃王を制止する。
璃王の言葉にグレアはどんどん落ち込んでいる様で、彼はデスクに項垂れた。
事件の被害者の中には、学生時代にグレアと仲の良かった女性も何人か居たらしく、グレアがショックを受けている事は解った。
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