13人が本棚に入れています
本棚に追加
「それだけの為に・・・・・・か?」
弱々しいグレアの問いに、璃王はキッパリと言い放つ。
「公爵にとっての「それだけ」が、彼にとっては大きかった。 それだけだ。
彼女たちは、公爵への理不尽な復讐に利用されたワケだ 」
本人に手が届かないなら、本人に近い人間を貶めよう。
そんなグランツの考えで、犠牲になってしまった女性達。
自分が目立ち過ぎた所為で、巻き込まれたのだと知り、グレアは尚、俯く。
弥王は「言い過ぎだ」と、璃王を咎めた。
「そんな・・・・・・それでは、彼女達に申し訳──」
「公爵」
グレアが呟くのを遮って、弥王がグレアに声を掛ける。
弥王は続けた。
「彼女達の事は残念だと思う。
でも、悔やんだって意味はないだろ。
悔やんだ所で時間は戻ってくれないのだから、彼女達に悪いと思うなら、顔を上げろ。
裏警察のボスが、そんな覇気のない顔でどうする。
元より覇気がない様な顔しているのにそれ以上そんな顔をしていると、オレ以外の隊員から呆れられるぞ。
だから、まぁ、しっかり気を持てよ・・・・・・公爵」
グレアに歩み寄ると、弥王はグレアの肩をポン、と叩き、そのインディゴの目を見る。
厳しい言い様は、彼なりの叱咤激励なのだと、グレアは思った。
まさか、年下の部下にそんな事を言われて元気付けられるなんて思いも寄らなかった。
ふと見上げた弥王の緑の目と、目が合う。
一瞬、弥王とあの少女の面影が重なって見えたグレアは、微笑むと頷いた。
「ああ、そうだな」
頷いたグレアの笑みに、弥王はもう大丈夫だな、と微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!