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月が南の空に高く昇って、町中が寝静まった夜中の英国の町の外れに二つの影が走る。
一人は、まるで何かを嘲笑っているかの様な怪人の様に不気味な笑みを湛えた白い仮面を付けている人物。
もう一方は、黒猫の仮面を付けた、白い仮面の人物よりも少し背が低めの人物だ。
何れも長髪で、その色は闇に融けている。
「・・・・・・璃王、左だ」
無感情に放たれた静かな声は、少年のモノであろうか。
白い仮面を付けている人物は誰かを追っている様で、隣を走る璃王、と呼んだ人物に短く命じた。
彼は、その静かな声を聞き漏らす事もなく頷くと、少年の隣から融ける様に左手の小道へと消えて行った。
それを見届けて、少年は仮面の下の口元に笑みを浮かべる。
バーカ、と小さく声が漏れた。
その声は、追い掛けている標的を嘲笑うかの様な響きがある。
──オレ達の庭で逃げきれるモノか。
夜の路地裏に少年の軽やかな足音が、不気味かつ不吉に響いて、消え失せた。
── ──
黒猫の仮面を着けた人物は、左側から標的を追い掛けていた。
壁を一つ挟んだ隣には、恐らく標的が相棒と追いかけっこをしている事だろう。
この辺りの地理は全て把握している。
次の角を曲がれば、標的が走っている先頭を塞げる。
彼は、視界に見えてきた十字路を右に曲がって、標的の行く手を阻む様に走り出した。
狭い路地裏で、前も後ろも囲まれた標的は、唯一の退路であろう、右側の小道に入っていった。
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