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暗く、冷たい空間。
そこに、弥王は居た。
正確には、感覚などはない。
これは夢であると、弥王は次第に見えてきた周りの景色を見て、理解する。
それは、暗い水底の夢だった。
時折、光が射しているのが見えるが、この深い水底にまで光は届かない。
綺麗な夢だ、と、弥王は思いながら、その夢が孤独と寂しさを孕んでいるのを感じた。
「水は好き・・・・・・キラキラしてるから・・・・・・。
でも──」
不意に背後から少女の声が聞こえて、弥王は急ぎ振り返る。
どうやら、この水底の夢の主らしい。
弥王は少女の姿を見て、絶句する。
そんな弥王に、体を抱え込む様に蹲った少女は言った。
「水の中は冷たくて、暗くて・・・・・・さみしい──」
(オレと同じ顔──!?)
そう言った少女は、目の色を除けば弥王と瓜二つだった。
10歳くらいだろうか。
少女は目を伏せて、そのまま水の中へ消えていった。
それと同時に、弥王の意識もその夢から離れて行く。
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