第4楽章 神月明日歌─コウツキ アスカ─

2/12
前へ
/398ページ
次へ
暗く、冷たい空間。 そこに、弥王は居た。 正確には、感覚などはない。 これは夢であると、弥王は次第に見えてきた周りの景色を見て、理解する。 それは、暗い水底の夢だった。 時折、光が射しているのが見えるが、この深い水底にまで光は届かない。 綺麗な夢だ、と、弥王は思いながら、その夢が孤独と寂しさを孕んでいるのを感じた。 「水は好き・・・・・・キラキラしてるから・・・・・・。 でも──」 不意に背後から少女の声が聞こえて、弥王は急ぎ振り返る。 どうやら、この水底の夢の主らしい。 弥王は少女の姿を見て、絶句する。 そんな弥王に、体を抱え込む様に蹲った少女は言った。 「水の中は冷たくて、暗くて・・・・・・さみしい──」 (オレと同じ顔──!?) そう言った少女は、目の色を除けば弥王と瓜二つだった。 10歳くらいだろうか。 少女は目を伏せて、そのまま水の中へ消えていった。 それと同時に、弥王の意識もその夢から離れて行く。
/398ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加