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── ──
「9年振りか・・・・・・イタリア──」
璃王は、ある人物に会う為、故郷──イタリアの地を踏んでいた。
街より随分と離れた辺鄙な場所に、その小さな村はある。
村、と言ってもその場所は、ある一族が管理している土地で、その一族の人間以外は誰も住んでいない。
その村の名は、「十二支の村」。
璃王が生まれ、少しの間だけ住んでいた場所だ。
ある事情から両親と村を飛び出して、有事の招集以外の時はその敷地を跨ぐ事を禁じられているのだが、その“ある人物”に会う為には、どうしてもこの敷地を跨がなくてはならない。
──どうしたものか。
璃王は、その場所をじっと直立不動で見つめていた。
軈て決心をすると、璃王はその敷地へ足を踏み入れようと、足を伸ばそうとする。
その瞬間の事だった。
「忌み子・・・・・・リオン・ヴェルベーラ・・・・・・?」
ドサッと、何かが落ちる様な音と重なって、少女の声が背後から聞こえた。
その声に振り向けば、璃王と少しだけ容姿が似ている少女が愕然と立ち尽くしている。
「まさか、本当に・・・・・・?」
風に流されているダークブルーのロングストレートの髪は背中のあたりまで長く、左目尻の泣き黒子が特徴的で、更に目を引くのが、その色違いの双眼。
左目は璃王と同じ藍色、右目は気の強そうな黄金の瞳。
声は落ち着いていて、とても自分と同い年だとは思えない。
自然的に璃王の口からは、その少女の名前が零れた。
「ラル・・・・・・プリム・・・・・・」
少女──ラル・プリムは璃王の親戚で、一族の中で璃王とまともに接してくれていた数少ない親戚だ。
璃王と同じタイプの呪幻術師で、幼い頃はたまに遊んでいた。
「大丈夫だよ。
今、集落の年寄り連中は、アリアの神宮に行ってて居ないから。
丁度クッキーも焼けている頃だし、イタイ兄もボンクラな姉もミーハーな姉も居ないから、ウチに来る?
久し振りに話したいこともあるしね」
「そうだな。 そうさせてもらう」
ラルの申し出を、璃王は受け入れた。
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