第4楽章 神月明日歌─コウツキ アスカ─

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── ── 「9年振りか・・・・・・イタリア──」 璃王は、ある人物に会う為、故郷──イタリアの地を踏んでいた。 街より随分と離れた辺鄙な場所に、その小さな村はある。 村、と言ってもその場所は、ある一族が管理している土地で、その一族の人間以外は誰も住んでいない。 その村の名は、「十二支の村(ドーディチ・ヴィッラッジョ)」。 璃王が生まれ、少しの間だけ住んでいた場所だ。 ある事情から両親と村を飛び出して、有事の招集以外の時はその敷地を跨ぐ事を禁じられているのだが、その“ある人物”に会う為には、どうしてもこの敷地を跨がなくてはならない。 ──どうしたものか。 璃王は、その場所をじっと直立不動で見つめていた。 軈て決心をすると、璃王はその敷地へ足を踏み入れようと、足を伸ばそうとする。 その瞬間の事だった。 「忌み子・・・・・・リオン・ヴェルベーラ・・・・・・?」 ドサッと、何かが落ちる様な音と重なって、少女の声が背後から聞こえた。 その声に振り向けば、璃王と少しだけ容姿が似ている少女が愕然と立ち尽くしている。 「まさか、本当に・・・・・・?」 風に流されているダークブルーのロングストレートの髪は背中のあたりまで長く、左目尻の泣き黒子が特徴的で、更に目を引くのが、その色違いの双眼。 左目は璃王と同じ藍色、右目は気の強そうな黄金の瞳。 声は落ち着いていて、とても自分と同い年だとは思えない。 自然的に璃王の口からは、その少女の名前が零れた。 「ラル・・・・・・プリム・・・・・・」 少女──ラル・プリムは璃王の親戚で、一族の中で璃王とまともに接してくれていた数少ない親戚だ。 璃王と同じタイプの呪幻術師(ユリア)で、幼い頃はたまに遊んでいた。 「大丈夫だよ。 今、集落の年寄り連中は、アリアの神宮に行ってて居ないから。 丁度クッキーも焼けている頃だし、イタイ兄もボンクラな姉もミーハーな姉も居ないから、ウチに来る? 久し振りに話したいこともあるしね」 「そうだな。 そうさせてもらう」 ラルの申し出を、璃王は受け入れた。
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