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── ──
「あー、璃王も公爵も居なくて・・・・・・暇だけど、こう、悠々自適の休暇も良いもんだなぁ・・・・・・」
国立公園の小高い丘を越えた場所にある湖の辺りに、弥王は寝転がって居た。
暖かな日差しが瞼を重くして、弥王は微睡む。
取り敢えず弥王は、本があって寝心地が良い場所なら何処でも眠れる人で、国立公園の湖は弥王の昼寝スポットになっていた。
(まさか、真偽のアイシャ置いてあるなんて思わないだろ。
あの本屋、切り裂きジャックは気に食わないから置かないって言ってたのに。
さて、任務もなし、バイトもなし、面倒な貴族・・・・・・面倒な貴族(大事な事なので(略))からの依頼もなし、読みたかった小説も手に入って・・・・・・今日はツイてる!)
休暇をグレアからもらった時、『明日は雨のち雷時々ハリケーン、所によっては隕石落下が予想される』と、璃王が世界の終わりを告げられた司祭の様な絶望した顔をしながら言っていたのを思い出す。
確かに何か嫌な予感はするものの、弥王は素直に休暇を満喫する。
うつらうつらと意識を揺らしていると、不意に弥王の耳に何かが水に飛び込む様な衝撃音が届いた。
「今の音は!?」
突然の音に、ハッと意識を覚醒させ、弥王は辺りを見回す。
すると、弥王の居る場所から1メートルくらい離れた所に白いパンプスが揃えて置かれていた。
その前の水面が、何かを投入した後の様に揺らいで、波紋を作っている。
「おいおいおい、ちょっと待てよ、これはヤバすぎるって!」
弥王は、上に着ていたシャツを脱ぎ捨てると、湖に飛び込む。
浮かび上がっていない事を考えると、意図的に入水したのだろうか。
──自殺するのはいいが、目の前でしてくれるなよ、まったく!
内心で毒づきながら水中を潜っていると、湖の中の少し深い場所で紫の長髪が揺らめいているのを確認した。
弥王は、そこまで泳いでいく。
すると、白いワンピースを着た、まだ幼い少女の姿を捉えた。
少女の腕を引き寄せて、抱え込む様に水面を目指し、泳ぐ。
弥王は、湖から上がって少女を引き上げた。
その少女の顔を見た瞬間、弥王は驚愕する。
「この子は──!?」
その少女は、今朝、弥王が入り込んでしまった夢の主の少女だった。
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