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「リオンと姫が消息不明になって、あれから7年と9ヶ月。 皆、リオンと姫が死んだものだと思っていた」
所変わって、十二支の村では、璃王がラルに招かれて、ラルの家に来ていた。
目の前には綺麗に並べられたクッキーと、甘い香りを放つミルクティーが置かれている。
ラルは、近況を璃王に話していた。 璃王は黙ってそれを聞いている。
「リオンが死んだと思って、その・・・・・・喜んだ人や、後悔する人間が居て、ちょっとした問題になった」
ラルの話を聞いていた璃王は、「やっぱりか」と、複雑な気持ちを抱く。
特異な体質を持つ桜の一族の中でも、璃王の体質は異様な物だった為、一族の人間は璃王を差別して、蔑んでいた。
だからまぁ、居なくなって喜ばれるのは仕方ないか、と、璃王は割り切る。
そして、ラルの言った「後悔する人間」と言う言葉が気になって、璃王は尋ねる。
「後悔する人間? そんな酔狂な人間が何処に・・・・・・」
訊こうとして、ラルの顔を見た璃王は、押し黙る。
彼女は、自分が居なくなった事を随分と心配していたと、暗に言ったのだ。
何も言えなくなった璃王は黙って、話の続きを促した。
「唯ひとり、お前と意識を共有できると言う、ヴァルフォアの呪いを持たない神子、セラ・チリエージュは、お前が“死んだ”とは考えていなかった様だけどな」
セラ・チリエージュ。 その人物は、一族が持って生まれる特異な体質──ラルの言っていた“呪い”を持たずに生まれ、一族からは“最後の子”として、神に近い存在の様に扱われている。
そんなセラ・チリエージュは、一族が生まれながらに受けている呪いを持たずに生まれたその代りに、璃王と意識を共有できる力を持っていた。
その為に璃王が死んだとは考えなかったのだろう、と、璃王は理解する。
「それを知った一族の大半は、お前の居場所をセラに問い質そうとした。
それ以来、セラは“呪いの森”の奥にある祠へ閉じ籠るようになった。それはもう、7年前の事だ。
今では、闇の精霊、シェイドと契約し、祠の近くへは誰も近付けなくなっていると言う」
闇の精霊、シェイド、と聞いて、璃王はマジかよ・・・・・・と、 若干、顔を引き攣らせる。
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