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「うぅ・・・・・・ん・・・・・・」
小さな唸り声が聞こえて、弥王は読んでいた本を閉じる。
あれから、弥王は少女を裏警察本部の自分の部屋に連れて行って、少女の眼が覚めるのを待っていたのだ。
ふと隣を見れば、先程助けた少女が目を覚ましていた。
「お目覚めの様だな」
弥王は少女に声を掛けた。
「気分はどうだ?」
問いかけながら、弥王は少女に手を伸ばした。
少女は、伸ばされたその掌に恐怖を抱いたのか、目をギュッと瞑って、シーツを握り締める。
どうやら、少女は相当怖い思いをしてきたのだと、弥王は何となく思う。
「怖がらなくて良いよ」
弥王は、努めて優しい口調で諭す様に声を掛けると、少女の髪を撫でる。
そっと、少女は弥王の顔を伺う様に見上げた。
「別にさ、殴ろうとか思ってないから。
怖がらせて、すまない」
見上げてくる少女に微笑んで、弥王は言った。
少女は首を振ると、辺りを見回す。
見慣れない部屋。
黒と紫で埋め尽くされた部屋は、この人の趣味なのだろうか。
少女は、弥王に尋ねる。
「あの、ここは・・・・・・?」
「オレの部屋だ。
君、あの湖で溺れて、近くに居たオレが助けたんだ」
少女の質問に、弥王は答えた。
弥王の回答に、少女は睫毛を伏せる。
本当は溺れたんじゃない。本当は──。
助けてもらった事に、少女は罪悪感を覚える。
「どうして、あんな所に居たのか・・・・・・訊きたいが、まぁ、大体予想はつく。
じゃないと、余程の物好きじゃない限りは、寒中水泳なんてしようとは思わないし・・・・・・しかも、服を着た状態でな」
弥王は、少女が不注意で溺れた訳じゃないのを見抜いた。
弥王の言葉に少女は、シーツを握った手に視線を落とす。
暫くの間、弥王と少女の間で沈黙が流れ、少女はポツリと語り始めた。
「アスは・・・・・・化け物だから、居ちゃダメなの・・・・・・」
アス、と自分を呼んだ少女の話を、弥王は黙って聞く。
少女の目には、透明な膜が張っており、今にも泣きそうだった。
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