第4楽章 神月明日歌─コウツキ アスカ─

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「うぅ・・・・・・ん・・・・・・」 小さな唸り声が聞こえて、弥王は読んでいた本を閉じる。 あれから、弥王は少女を裏警察(シークレット・ヤード)本部の自分の部屋に連れて行って、少女の眼が覚めるのを待っていたのだ。 ふと隣を見れば、先程助けた少女が目を覚ましていた。 「お目覚めの様だな」 弥王は少女に声を掛けた。 「気分はどうだ?」 問いかけながら、弥王は少女に手を伸ばした。 少女は、伸ばされたその掌に恐怖を抱いたのか、目をギュッと瞑って、シーツを握り締める。 どうやら、少女は相当怖い思いをしてきたのだと、弥王は何となく思う。 「怖がらなくて良いよ」 弥王は、努めて優しい口調で諭す様に声を掛けると、少女の髪を撫でる。 そっと、少女は弥王の顔を伺う様に見上げた。 「別にさ、殴ろうとか思ってないから。 怖がらせて、すまない」 見上げてくる少女に微笑んで、弥王は言った。 少女は首を振ると、辺りを見回す。 見慣れない部屋。 黒と紫で埋め尽くされた部屋は、この人の趣味なのだろうか。 少女は、弥王に尋ねる。 「あの、ここは・・・・・・?」 「オレの部屋だ。 君、あの湖で溺れて、近くに居たオレが助けたんだ」 少女の質問に、弥王は答えた。 弥王の回答に、少女は睫毛を伏せる。 本当は溺れたんじゃない。本当は──。 助けてもらった事に、少女は罪悪感を覚える。 「どうして、あんな所に居たのか・・・・・・訊きたいが、まぁ、大体予想はつく。 じゃないと、余程の物好きじゃない限りは、寒中水泳なんてしようとは思わないし・・・・・・しかも、服を着た状態でな」 弥王は、少女が不注意で溺れた訳じゃないのを見抜いた。 弥王の言葉に少女は、シーツを握った手に視線を落とす。 暫くの間、弥王と少女の間で沈黙が流れ、少女はポツリと語り始めた。 「アスは・・・・・・化け物だから、居ちゃダメなの・・・・・・」 アス、と自分を呼んだ少女の話を、弥王は黙って聞く。 少女の目には、透明な膜が張っており、今にも泣きそうだった。
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