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十二支の村(ドーディチ・ヴィッラッジョ)を出て、西に向かって歩くと、その辺の木よりも背の高い大樹が群生している場所がある。
樹高は60m、樹齢二千年の大樹が自生して出来ているこの森は、“呪いの森”。
先程、ラルが言っていた森である。
人類が生まれて約千九百年経っているが、まだ謎は解明されておらず、また、人間がこの森に入れば死霊に引かれる事から、“死の森”とも呼ばれ、この森での自殺者も多いと言われている。
璃王は、目の前に聳え立つ大樹の大群を見上げた。
「――この奥に・・・・・・ セラ・ヴァルフォアが――」
自身の身丈の倍もの高さの大樹を見上げながら璃王は独り言ちると、森の中に入っていく。
森の中は午前中だと言うのに暗く、まるで、日没か夜明け前の様な雰囲気だ。
森の最深部の手前まで行くと、そこだけ木が根刮ぎなく、代わりに何か、葉が生えている。
よく見ると、それは野菜だった。
「何故、こんな所に野菜が・・・・・・」
疑問を口にした後で、璃王は、当たり前か、と納得する。
こんな所に閉じ籠っているんだから、自給自足するしかないな、と。
畑を過ぎて、また暫く歩くと、人一人分が入れそうな大きな祠が見えた。
祠の近くの大きな石の上に、白いマントを羽織り、同色のフードを被った小柄な人物が膝を立てて座っている。
「そろそろ、来る頃だと思っていたよ、リオン」
膝に頭を乗せて顔を璃王へと向けると、その人物は言った。
顔はフードで隠れていて見えないが、この言葉遣いは間違いなく、璃王が会おうとしていた人物の物だ。
「君が望む情報・・・・・・果たして、オレが持っているかねぇ?」
口角を上げて、璃王を茶化す様に喋る声は中性的で、それだけでは性別を判断できない。
言葉遣いからは、男性だと思われる。
「茶化すな。
「レイナス」っていう奴の事を知りたい。 どうせ、オレの見ていたモノ、見えていたんだろ?」
彼――セラ・ヴァルフォア――の言葉を一蹴すると、璃王は本題に入る。
奴の言葉なんか、まともに聞いていたらキリがないからだ。
レイナス、と聞いたセラの口元が若干、下がった。
それを見逃がす璃王ではなく、今すぐにでも問い質したいと思った。 だが、問い質した所で、どうせ――。
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